第440話 血族の呪縛

すると空弧の父の直ぐ傍にいる女魔神族が


「ふん、一族の使命から逃げ出したいが為に伝説の力を目覚めさせ、挙句今度はその伝説の力で私達の邪魔をしたってのかい。どこまで疫病神なのかねこの子は!!」


と吐き捨てる様に言う。その言動からは空弧の母なのか姉妹なのかは分からないが並々ならぬ憎悪と軽蔑を含んだ言動であるという事は容易に想像出来た。それに対し空弧は


「確かにそうだったかもしれないわね、あの当時は……でも今は違う!!」


と強い口調で言い返すがその魔神族は


「ふん、どこが違うんだい?私達一族の面汚しでありながらそれを返上するチャンスをみすみす棒に振り、其ればかりか更なる疫病神として私達に襲い掛かってきているじゃないか」


と尚も軽蔑した口調を向ける。それに対し反論しかねる空弧、だが次の瞬間鎌鼬がその魔神族に直撃し、その右半身を切断してその場に倒れ込ませる。

それを見た空弧の血族達が一斉に衝撃波の方向を見るとそこには武器の剣を取り戻した星峰が立っていた。


「何っ!?しまった……だが、空弧の体が別の存在になっているのならお前は空弧に利用された存在の筈……どうして俺達に味方しない!!お前にとっても空弧は憎むべき敵の筈だ!!」


星峰を拘束していた兄とは違う魔神族がそう焦った口調で言う。空弧に体を奪われた存在である事は想像出来たのだろう。だが星峰は


「確かに最初の頃はそう思ったこともあるわ。けど今は違う。今の私の敵は……いえ、それも違うわね。私の敵は元からあんた達ブントだった!!ただ、それに気づいていなかっただけでね」


と言うと手にした剣を空弧の血族に向けて構える。


「ええい、だが何故自分の体を奪った奴を信頼出来る!!仮にも……」

「信頼する事と体を奪った事には何の関係性もないわ。私は只、私の思うままに戦うだけよ!!」


空弧の父の言葉を遮り、星峰はそう語ると後ろから走り、空弧たちに合流する。


「星峰……」

「その言葉の続きはこの場を切り抜けてから聞かせてもらうわ。さあ、ここで決着をつけましょう。このろくでなしな血族との因縁を断ち切る為に!!」


空弧が何かを言いかけるが星峰は敢えてそれを遮り、目の前の戦いへと空弧の意識を向けさせる。


「ええ、分かったわ!!」


と言って星峰と同じ方向を向き、肩を並べる空弧、同じ記憶を持ってはいるとはいえ、これほどまでに同調した事は今までなかった。


「岬、星峰に上手く渡せたんだな」


八咫がそういうと岬は


「ええ、ここに来る途中の部屋で星峰の武器を見つけた時は流石に青ざめたけどね。でもこうして無事手元に戻った。さあ、私達も」


と言い、戦いの準備を整える。

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