第430話 星峰の提案

星峰の指差した人族部隊の動きを見てみると人族部隊の一部が外側に出、明らかに本隊から離れて何処かへ向かおうとしていた。


「部隊の一部が外に……二手に分かれてこようとしていると言う事でしょうか?」


岬がそう口にすると天之御は


「そうかもしれないけど、何故ここで……あの動き、もしかしてその進路は……」


と言い、何かを察したような口調で話す。その声と同時に分裂した人族部隊は地図に表示されている森の中に入って行った。


「天之御殿下、一体どうなさいました?」


基地司令が天之御にそう尋ねると天之御は


「僕の予想通り、分裂した人族部隊は八米街近くの森の中に突入していったよ」


と返答する。すると司令は


「それは……確かに厄介ですね……」


と告げ、天之御が感じている不安に同意するような口調とそれを証明する様な深刻な表情を見せる。それを見た星峰が


「あの森に入られるとそんなに厄介なの?」


と尋ねる。周囲の表情から何となくそれは察していたものの、確証がない為に問いかける必要があったからだ。それを聞いた空弧は


「あの森は昔から怨念の様な者達が漂う厄介な場所でね。誰も行きたがらず、それ故に地理関係の詳細な情報が入手出来ていないの。そんなところに侵入されたとなると……」


と深刻な表情を浮かべ、その返答に星峰も


「要するに迎撃が難しいって訳ね。それに地理関係の情報がない以上、万が一その中に隠し通路でも仕掛けられていたりしたら」


とその問題の内容を理解する。それがどれだけ厄介な話なのかは星峰自身、容易に想像がついた。迎撃が困難である上、情報がないと言う大きな不確定要素を含んだ場所であるというのが戦場でどう作用するか、それは今までの経験からも理解出来た。


「不確定な要素が含まれている以上、正面の敵部隊に全力を投入するのは危険が伴いますね……どうするべきか」


基地司令が苦悩の表情を浮かべる。すると助け舟を出そうと思ったのか星峰が


「なら森の部隊は私が迎撃します。基地部隊の皆さんは正面からの敵部隊に専念して下さい」


と告げる。その声に天之御や空弧は困惑の表情を浮かべ、特に空弧は


「え……星峰、構わないの?」


と告げる。空弧がそう口にする程にその森は危険な場所なのだろうか。だがそれを聞いて星峰は


「ええ、二人がそんな表情を浮かべる場所であれば尚更放置して置く訳には行かないわ。でもかといって全員で出向くのも危険が伴う。なら誰かが単独で迎撃し、他の面々が状況に応じてサポートするのが一番得策よ」


と言い、自らが迎撃役を買って出る事を告げる。

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