第429話 それぞれの故郷と因果
「知らない間にって……えっ!?それってまさか……」
天之御は一瞬呆れた様な声を上げるが、その意味を考えて直ぐにその声と顔を撤回する。それを見た星峰は
「そう、先日那智街で提供してもらったデータの中にあったのよ。この二回目の襲撃の記録がね」
と続ける。その顔に先程までの笑みは無く、作戦行動中と同様の真顔を見せていた。それはこの事実が決して笑い事ではない事を意味している。それに気づいたのか、涙名も
「となると、那智街とその消された街には何らかの繋がりがあるって事?」
と口にする。
「まだそうだとは断定出来ない。単にデータを入手出来ただけかもしれないからね。と言ってもそのデータを入手出来ている事自体がこの場合問題な訳なんだけど」
天之御がそう続けると星峰、涙名も共に頷く。
「となると、那智街を調べる事が結果としてこっちの謎を解明する事に繋がるかもしれないって訳か」
これまでの状況を整理し、こう結論付ける天之御。だがその直後、その結論に水を差すかの様にタイミングを見計らって警報が鳴り始める。
「警報!?しかもこの音、襲撃パターンの警報だよ!!」
涙名がそう叫ぶと天之御は
「急いで状況を確認しよう!!」
と言ってブエルス内部の司令室に急ぐ。勿論星峰と涙名も同様だ。そして司令室に着くとそこには既に空弧達が来ており、前方のモニターには部隊の展開図を映す青と赤のアイコンが表示されていた。
「何事が起ったの?」
天之御がそう叫ぶと前のモニターに八米街の司令が映し出され
「天之御殿下!!先程人族部隊が突然この八米街に侵攻してきました。現在迎撃態勢を整えています」
と告げる。それを聞いて星峰は
「人族部隊が侵攻って……一体どこからそんな戦力が……」
と困惑した表情を見せる。周囲の街の状況から見ても侵攻出来る程の大規模な戦力を用意する余裕が人族部隊にあるとは思えなかったからだ。
「恐らくはブント部隊、又はその戦力提供を受けた部隊と思われます。そしてこの侵攻通路、恐らくは手引きをした者がいるのでしょう」
司令がそういうと空弧は
「その手引きをした連中は見当がつくわ。あいつ等ならそのくらい平気でやるもの。そして八米街に侵攻してきたって事は、いよいよ邪魔になって来たって事かしらね」
とどこか毒気付いた口調で話す。そのあいつらが何を意味しているのか星峰は何となく察するものの、それは敢えて口に出さない事にした。
「こちらも迎撃態勢を整えています。ここは……」
司令がそう言いかけた直後、星峰が
「見て、人族部隊が……」
と言って人族部隊のアイコンを指差す。
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