第431話 迎撃戦開始
「それは確かにそうだけど、その単独で迎撃に向かうのは……」
「勿論私が行くつもりよ」
岬が少し戸惑いながら声を上げると星峰は強くそう言い切る。その声は戸惑っている岬の戸惑いを振り払わせようとしているようにも見える。その強気な声に圧倒されたのか、天之御は
「分かった。星峰に任せるよ。他の皆は万が一に備えて待機しておく」
と頷きながら言い、他の面々も無言でそれに納得する。
「ありがとう、じゃ、行ってくるわね」
星峰はそういうと転移妖術を使い、自らを戦場へと転移させる。それをみて空弧は
「星峰……」
と呟く。その声には明らかに心配の意味が込められていた。それを感じ取ったのか、天之御が
「空弧……やはり心配なの?」
と小声で話しかける。その囁くような小声に空弧は
「ええ、星峰の実力は私が一番よく知っているつもりです。でも今回裏で手引きしているであろう奴等の事も私が一番よく知っていると考えています。そう考えるとやはり、不安はありますね」
と天之御に返答を返す。その声は明らかに不安と心配が混ざっており、何時もの勢いはなかった。それ程今回の襲撃の裏を懸念しているのだろう。それを察したのかそうでないのか、涙名は
「やはり、生まれ故郷だから複雑なの?」
と敢えてその心理に踏み込む様な発言をする。
「え……一寸……」
それを聞いた途端、岬がその言葉が耳に入るのを阻止したいかのように声を上げる。だが空弧は
「いいえ、分かっているわ。いつまでも目を背けている訳には行かないもの。もし奴等が何か仕掛けてきたら、その時は……」
と険しい顔ながらも決意を表明する。だが天之御にはその顔は寧ろ重圧に潰されかねない危うさを感じさせる物に見えた。
一方、戦場となる森にワープした星峰の前方には既に人族部隊が迫りつつあった。その中には装甲車も確認でき、こちらが本命であるかもしれないという予測を立てるのは一瞬で済む。
「これだけの部隊を送り込んでいるとなると敵は此処の地理を把握している可能性も高い。長引かせると不利になるわね」
星峰は状況をそう分析すると剣を抜き、人族部隊へと向かっていく。そして最前線の敵に対して
「狐妖剣術……紅玉の破断!!」
と言って赤く染め上げた剣を一回転させ、そのまま赤い斬撃として放って人族部隊を跳ね飛ばす。その斬撃は装甲車もそのまま両断し、侵攻していた人族部隊の出鼻を挫く。
「くっ、ここを潜れば我々の勝利だというのに……ええい、怯むな!!」
人族部隊は星峰の力を前にしても直向かって来る。それを見た星峰は
「あくまでもブントに従うのね!!」
と半分呆れた様な声で言い、迎え撃つ体制に入る。
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