第409話 内側への疑念

「新たな先史遺産の遺跡?場所はどこなの?」


空弧がそう質問するとその協力者は


「残念ですが、まだ場所については公表されていません。恐らく外部への情報流出を機にしての事だとは思いますが、民間に流れた情報は発見したという事のみであり、それ自体も事実かどうかは分かりません」


と告げる。それを聞いた星峰は


「つまり、その情報がブントにとってのスパイ、つまり貴方の様な協力者をあぶりだす為のはったりである可能性もあるという訳ね。でも、そうだとしてもそんな情報を流してくるという事は……」


とその顔に強い懸念を浮かべ、涙名も


「うん。少なくとも何らかの動きを見せようとしていると考えてまず間違いないと思う。そしてこうした手を打ってきたという事はつまり……」


と星峰に言葉を続けつつ何かを言いかけ、そこに豊雲が


「内部にスパイが居る事を疑い始めている。そういう事ですね」


と締めの言葉を言う。その直後、協力者は


「!!どうやらその疑いの目は既に無視出来ないレベルにまでなっている様です。又何か分かったら連絡します」


と言って通信を切る。その唐突な通信の切れ方に空弧は


「大丈夫かしら、今の通信の切り方、まるで……」


と心配する声を挙げる。それを聞いた天之御は


「もう既に疑いの目を向けられ、刺客を差し向けられた。そんな雰囲気が漂っていたね。心配ではあるけど、でも今ここで僕達が早々に動いたらそれこそ疑いの目を持たれる事になる。悔しいがここは警戒を強めておくしかない」


と言い、自身も含めたその場に居る全員に言い聞かせる。勿論これには勝手な行動を慎むという暗黙の意味も含まれていた。

一方、此れと同じ情報を違う場所、違う立場で知っている人物もいた。そう、アンナースである。例の拠点の自室でこの情報を知ったアンナースは


「新たな先史遺産の遺跡を発見か~でも距離が遠いから私には縁遠い話になりそうね。早くあのオアシスを抑えないと今後厄介な事になるのは間違いないし。

ただ、これを見つけたのがあいつの部隊っていうのが……気に入らないわね」


と通信端末の画面を見ながら呟く。アンナースの言うあいつとは一体何者なのだろうか?そして気に入らないというのは?

そうアンナースが呟いた直後、拠点内部に収集の放送が鳴り響く。それを聞き


「さあ、お仕事しないとね!!」


と言ってアンナースは部屋の外に出て拠点司令室へと向かう。するとそこには既にコンスタリオ小隊、そして何名かの兵士も集められていた。

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