第410話 三度のオアシスへ

兵士達は落ち着きがない様子でガヤガヤと騒いでいる。まだ集められた理由が明らかにされていないのだろう。だが集められた兵士の人数から考えてこれが奪還や侵攻の類でない事はコンスタリオ小隊やアンナースの眼には明らかに映っていた。


「急に呼び出して申し訳ないね」


何時もの様に前に出た部隊長はそう告げる。その口調は何時もの作戦口調とは少し違い、切羽詰まった様な状況ではなかった。だが、かといってボーナスをくれるという風な雰囲気でもない。


「本日ここに集まってもらったのは例のオアシスについてだ。現地に駐在している部隊がオアシスを調査していた所、その内の数名が突如として消息を絶ったという」


その言葉の内容は衝撃的だが、音程には緊張感や危機感は感じられない。当然その事に気付いたコンスタリオは


「消息を絶った……と言う報告にしては随分と冷静なですね。無事であるという確証があるのですか?」


と疑問とも嫌味とも取れる問いかけを部隊長にする。すると部隊長は


「確証も何も、消息を絶った数名は既に発見されている。それも心身共に異常無しでだ。只、不可思議な事にその消息不明になっている間の記憶が全く残っていないのだという」


とコンスタリオの疑問に答える。その返答は完ぺきな物であり、コンスタリオはそれ以上何かを質問する事は無かった。


「成程、で、その原因を調査する為に私達にも協力して欲しいという訳ですね」

「ああ、何しろ場所が場所名だけに何かあってからでは手遅れになりかねん。ここに集まった面々はあのオアシスでの戦闘経験もあるから調査任務にも適しているだろう」


アンナースがそう言って自分達が集められた理由を推測すると部隊長はそれを肯定する。


「分かりました。では早速出撃します」


先程の質問を少し気にしているのか、申し訳なさそうな顔でコンスタリオがそう告げると部隊長は


「頼んだぞ」


とだけ告げてその場から去っていく。その直後その場に居た面々は出撃体制を取り、直ちにオアシスに向かって発進していく。


「何か……腑に落ちませんね」


移動中、シレットがそう呟くと


「ああ、今回の出撃、何か裏がありそうだな」


とモイスも同意する。そして


「ええ、だからこそ、敢えて出撃してみたのだけど……」


とコンスタリオが続けたことによりその疑念は更に深まる。そうこうしている内に現場となるオアシスに到着し、現地駐在部隊と合流する。


「皆さん、お待ちしていました。既にお話は行っていると思いますが……」


現地の部隊長らしき人族はコンスタリオ達を見つけると駆け寄り、起こった事の一部始終を話す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る