第408話 仮説の先に
「そんな事があったなんて……」
星峰が告げた事実は天之御ですらも驚きを隠せない様子だった。それ程大きな衝撃だったのだろう。そして、それは同時にそこは八咫にとって触れられたくない部分であると言う事も容易に想像出来た。更に言ってしまえばその点が星峰に仮説を抱かせた要因でもある。
「もし仮にそうであるとするならあの子供に対する一件も納得がいきますが……」
「うん。もし星峰の仮説が的中しているのだとするなら相当慎重に動く必要があるね……」
仮説を聞き、豊雲は納得はするものの、同時に警戒心も強く持つ。それは天之御も同様であった。
「育ての親……だとしたら八咫は何処で生まれ育ったんだろう……」
星峰から聞かされたその言葉に強く反応する天之御。
「天之御も知らなかったのね……」
星峰がそう問いかけると天之御は首を縦に振って頷き
「うん。僕の父、先代魔王と共に初めて八咫の親御さんに会った時、既に星峰の言っていた育ての親は八咫の親御さんとして顔を合わせていたよ。
それから幾度となく出会って、こうして協力し合う様になって……でも、今の事実は本当に知らなかった……」
その様子から知らなかった事は虚言ではなく事実であるという事は星峰には容易に想像出来た。否、そもそも天之御が虚言をその口から出すこと自体余程の事である。それを分かる事が出来たからこそ星峰も協力しているのだから。
「八咫の親御さんに問題がある訳ではないけど、この発言を聞く限りでは私の仮説も可能性の一つとしてはあり得ると考えざるを得ない。それに、豊雲が言っていたような場所が那智街の他のエリア、更に言ってしまえば那智街以外の街にも存在している可能性もある。
この件については目を背ける訳には行かないわ」
星峰が口早に説明するとその場に居た他の面々は皆首を縦に振り、頷く。星峰の言う事は事実であり、危険性を秘めた物である事は承知していた。
「念の為、各タウンの協力者にもこの事を伝えておいた方がよさそうだね。そして、可能であれば調査も行ってもらおう」
天之御はこう告げると各タウンに連絡を入れようとする。だがその直後、先にどこかから通信が入ってくる。
「先に通信?何処から……」
岬が疑問に思いながら応対するとその通信先は西大陸の首都からであった。
「どうしたの?潜入中に通信を送ってくるなんて余程の……」
涙名が通信先の相手にそう告げるとその通信先の相手である人族は
「事が起きました。ブントが例のオアシスとは異なる先史遺産の遺跡を発見したとの発表が行われたのです」
と告げ、その内容を聞いた一行の顔は例外なく歪んだ物になる。
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