第407話 それぞれの仮説

「妙な子供?」


岬が尋ねると豊雲は


「ええ、見た目は亡霊の様でしたが武器による打撃は有効であり、且つ明確な意思の様な物を持って行動していました」


とあの光の子供について自身の感じた印象をそのままに話す。それを聞いた星峰が


「亡霊の様な物……それは先史遺産の施設で交戦した亡霊とは違うの?」


と問いかけると豊雲は


「ええ、あの亡霊達の様に禍々しい悪意は感じませんでした。ただ、寂しいと連呼していただけで……」


と返答する。


「寂しい?一体どういう意味なのかしら?もし仮にそのままの意味であるならその子供は施設の中で育ち、そして施設の中で死んでいった。そう考えるのが妥当な線ではあるけど……」


空弧がそう疑念を口にすると豊雲は


「それは分かりません……ただ、あの亡霊達と先史遺産の兵器に憑依している亡霊達は明らかに性質が違う、そう感じました。一言で言えば無垢な敵意。構ってほしいが故に攻撃してくる。そんな雰囲気です」


と返答し、更なる疑問も続けて言う。


「無垢なる悪意……か。構ってほしいのだとしたらそれは幼児期の子供そのものの思考ね」


これまでの話を聞き、星峰は実直な感想を述べる。それは今後敵として交戦するであろう存在に対する意見と言う面もあり、又それが無視出来ない脅威になり得るという警戒心も含まれていた。


「で、八咫はどうしていたの?一緒に交戦していたんだよね?」


天之御がそう問いかけると豊雲は


「はい。交戦していました。ただ、特に感想や疑問を口にする事は無く、ただ敵として交戦している様な、そんな雰囲気でした」


と返答する。その返答は事実であり、あの時八咫は特に何も語る事無く戦っていた。だがそれを聞いた星峰が


「口にする事は無い……か。もしかしたら八咫は以前からその亡霊子供について何か知っているのかもしれないわね」


と仮説を口にした事によりその場に居る面々の顔が即座に驚いた物に変わる。


「えっ……それってつまり……」


涙名がそう問いかけると星峰は


「そう、八咫はその亡霊子供や施設と何か因縁があるのかもしれない。いえ、もしかしたら八咫は……」


と言いかけるがその最中に天之御が


「八咫は……何なの?」


と口を挟む形で問いかける。その顔は他の面々と同様に驚いた物であった。それを見た星峰は


「これ、言っておく方がいいわね。私に今回情報を提供してくれたのは……そして、もしかしたら」


と言うと星峰は那智街であった事とそこから推測した自身の仮説を話す。

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