第406話 らしく無さが示す物
そこは豊雲と八咫が先程までいた施設がある公園であった。その事実からあの施設がその問題の施設である事は二人には容易に予測はついた。だが
「しかし、施設の危険性を考えると現時点で何も考えずに飛び込んでいくのは危険が大きすぎる。よって今は星峰が入手してくれたデータの解析を最優先事項とし、それが終了してから今後この場所を調査するか否かを決定する」
と天之御が間髪を入れずに発言した事により豊雲は発言するタイミングを失い、更にそのまま転移妖術を発動させ、一行を有無を言わさずブエルスへと帰還させる。
ブエルスに帰還すると一行は何時も通り直ぐに自室へと戻る……かに見えたが八咫を除く全員が暫くすると謁見の間に戻ってくる。その際豊雲だけが困惑した表情を見せており、どうやら彼以外はあらかじめ打ち合わせていたようだ。
「天之御殿下……」
「分かってる。僕らしくなかったんでしょ」
豊雲の顔には露骨ではないものの、明らかに普段とは違う違和感があった。恐らくは先程の天之御の行動に不満があったのだろう。それを察したのか、天之御の表情には申し訳なさが少なからず見える。
「それはそうですね……何故強引にあの様な……それに私にあのような指示を?八咫の動きを見ていて欲しいと……」
豊雲が天之御に見せた不満、それは先程の会話だけでなく八咫の行動を見る様に告げた事もであった。それが監視目的であることは言葉にせずとも明白であったからだ。
「すまないね。だけどあそこが八咫の故郷であり、尚且つ僕の知り得ない遺恨があると言う事がどうしても頭から離れなかったんだ。もし万が一それが原因で突っ走ってしまう様な事があれば、それだけは防ぎたかった」
と事情を説明する。すると豊雲は
「まあ、それは実際可能性としては当たっていた訳ですが……」
と告げる。実際豊雲が見ていた八咫は周囲に目もくれず特定の場所に向かい、明らかに星峰が示した問題の施設を目指していた。それはその施設の事を事前に知っていたとしか思えなかった。
「と言う事はつまり、私が示した問題の施設を目指して移動していたのね」
星峰がそう聞くと豊雲は
「はい。最短且つスムーズに目指していました」
と返答する。この返答だけでも八咫があの施設について何か知っているのではないかと考えるには十分すぎる材料だった。
「そしてあの施設に入りましたが、中で私と八咫は妙な子供に襲われました」
そう続けて豊雲は施設内で交戦した事を伝える。
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