第404話 亡霊よりの後退

しかし、それでも消滅させる事は出来ず、尚も二人に向かってくる。


「黒羽の旋風!!」


八咫はそう言って羽から黒い風を巻き起こし、周囲を巻き込みつつ光の子供を吹き飛ばす。だがそれでも吹き飛ばす事こそ出来る物の、ダメージを与えているのかどうかは全く分からない。吹き飛ばしているだけで手応えが感じられないのである。


「こいつら、一体何なんだ!?只の亡霊とも、兵士とも兵器とも違う、一体……」


好転の兆しが見えない状況に焦りを感じ始めたのか何時になく早口になる豊雲、そんな彼の端末に通信が入ってくる。


「つっ、こんな時に……これは!?」


対応を後にしようと思った豊雲だが、端末に表示された天之御

の名前を目にしてそういう訳にもいかなくなる。近付いてきた光の子供を槍でついて距離を取ると豊雲は通信に応対し


「豊雲、直ちに引き上げるよ。現状で収集出来るだけの情報は収集したから」


と天之御の要件を聞く。


「天之御殿下……ですがこちらは……」


と言って謎の存在と交戦している事を告げようとするが天之御はそれに割って入る形で


「これは魔王としての命だよ」


と強い言葉で語る。それを聞いた豊雲は


「……了解!!」


とそれに負けない強い言葉で返答し


「八咫、天之御殿下から後退命令が下された」


と伝える。それを聞いた八咫は


「後退命令か……了解した。だがその為にはここから何とか引き上げねえとな!!」


と言うと黒羽を吹雪の様に飛ばして光の子供に目を眩ませ、その隙を突いて豊雲と共に来た道を引き返す。そして入ってきた公園に戻ると入った時に操作したスイッチを操作し、その入り口を閉鎖する。


「一体この場所は何なんだ……明らかに隠されている事と言い、中に居たあの子供達と言い……」


そういう豊雲の声は全力で駆け抜けた為か流石に息が切れており、ゼイゼイとして途切れ途切れの言葉となっていた。それは八咫も同様であったが八咫は


「兎に角、駐在軍基地まで戻るぞ。命令が出たって事はそれ程の何かがあったって事かもしれねえからな」


八咫はそういうと足早に駐在軍基地の方へと進んでいく。だがその様子を見た豊雲は


「……疑問は……もう一つ、八咫、君は一体……」


と言葉にこそ出さないものの、内心では思うのであった。

駐在軍基地に戻るとそこには既に他の全員が集まっており、最後になる豊雲と八咫の合流を待っていた。


「天之御殿下、命令でこちらに戻る様に言われたという事は何かあったのですか?」


豊雲がそう問いかけると天之御は


「ああ、もしかするとブントが何故この街を狙うのか、それが分かるかもしれない」


と告げる。

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