第385話 コンスタリオの休暇
「やっぱり、そう簡単に返答は来ないわよね」
納得したような、その一方でがっかりしたような表情を浮かべ、コンスタリオは端末の電源を落とし、部屋の外に出る。そしてそのまま拠点の外へと足を向けて行く。
「おや?コンスタリオさん、何方に?」
通りすがりの人族兵士が問いかけてくるとコンスタリオは
「偶には外を出歩いてみようと思ってね」
とだけ告げる。これは事実ではあった。今は出撃命令も出ておらず、今日は訓練の予定も無い。こんな日に外を出歩くのも悪くはないと思ったのだ。否、こんな日だからこそ外を出歩きたかった。このまま部屋でじっとしていては色々考えてしまうからだ。
外に出歩いて体を動かせば気分を変える事が出来るだろう。そんな考えがコンスタリオの中にはあった。
「そうですか、では」
通りすがりの兵士は一礼だけするとコンスタリオの近くから立ち去っていく。その様子はどこか機械的ですらあった。だが今コンスタリオがこんな事を考える事は無く、そのまま足を進めて拠点の外、街部分に出る。
街部分を眺めてみるとそこには建設中の建物が幾つかあるものの、戦時中とは思えない程穏やかな空気が流れていた。
「こうして建物が出来上がり、ここにも生命が栄えていく……だったらいいのにね」
何時になく詩人的な事を口ずさむコンスタリオ、もともとそういう気質だったのだろうか?それともそれほど内面に負担がかかっているという事なのだろうか?
コンスタリオは更に街を歩き、周囲を見渡しながらその足を踏み出していく。何時もの洗浄とは違い、その足取りは軽い。やはり内面が疲労していたのだろう。
そして暫く先に行くとそこで様々な機械が置いてある建物を見つける。建物はまだ建設途中であり、機械も動いていない様子だ。だがそれに何か興味を惹かれたのか、コンスタリオはその建物に近付いていく。
「ここはまだ建設途中ですよ」
作業員の一人に呼び止められ、コンスタリオはハッと我に返り
「あ……はい、申し訳ございません」
とその作業員に謝罪する。するとその顔でコンスタリオだと気付いたのか、その作業員は
「あれ?もしかしてコンスタリオ隊長さんですか?」
と言いながら近づいてくる。
「え?ええ……そうだけど」
思わぬ親し気な対応にコンスタリオは困惑しつつも返答する。するとその作業員は
「何時も活躍は拝見させて貰っていますよ。ここに来る前も色んな戦いを経験されてきたそうじゃないですか」
と口調こそ丁寧ではあるものの、初対面とは思えない程親しげに話しかけてくる。
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