第384話 それぞれが背負う葛藤
「空弧……星峰、君は……」
写真に写る幼い空弧を見つめながら天之御はそう呟く、その言葉は何時もの魔王としてではなく、何処か哀愁漂う少年の様な息遣いであった。それは果たして何を意味しているのだろうか?
一方、部屋に戻った空弧も又、同じく幼い自身と天之御が写った写真を見つめていた。
「天之御殿下……星峰……私に何が出来るの?嘗ての私に、星峰に何が起こっているの?私自身が向き合わないといけない事なら、星峰にそれを押し付けないでよ」
そう呟く空弧の声には悔恨が滲み出ていた。入れ替わりの妖術を使った事で自身が背負うべきものまで星峰に背負わせてしまったことに対してなのか、それとも何か他に理由があるのか。
一方、そんな二人とは対照的に星峰は部屋に戻るなり床に入り、疲労していたのかそのまま眠ってしまう。だがその内心では
「空弧……貴方は一体何を背負っていたの……」
と二人と同様の疑念を抱いてはいた。だがそれを考えては居ない、否、考えても今はどうする事も出来ないと思っているからこそ床に入っているのだ。
そして翌日、目覚めると星峰は
「いけない、昨日約束した例のデータを送信するのを忘れていたわ」
星峰はそう呟くと早速机の上の通信端末を起動し、その端末から問題のデータを秘密基地へと送信する。だがその直後星峰の目に思いもよらないものが飛び込んでくる。
「え……これって……」
それはコンスタリオからの通信文章だった。それを見た星峰の顔は困惑の色を隠し切れない。今までスターの元にコンスタリオが通信を送ってきたことは一度もなかったからだ。
「スター、貴方は今何処にいるの?もし、私がこれからする質問に答えてくれるのであれば答えてほしいの。
先日、私達は魔神族に制圧されていた松波街の奪還に成功したの。だけどその奪還には不審な点が幾つもあるの。あまりにもスムーズに行き過ぎた奪還、その後の協力者の対応、そして……
もし、これらの質問に答えられる状況にあるのなら答えてほしい。スター、貴方は今何処にいるの?」
文章にはそう書かれていた。それを見た星峰は
「コンスタリオ小隊も難しい立場に立たされているのね」
と言う認識を新たにする。一方、その文章を送っていた昨日、コンスタリオは
「この場に居ない人物を頼るなんて……私らしくないわね。でも、今はこうするしかない」
と不本意な文章を送る自分を不甲斐無く思いつつも端末の画面に向き、文章を入力していた。そして翌日、その端末を開くが当然返答がまだ来ている筈はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます