第383話 幼き時の

星峰に促され、霊諍は


「その変換する技術以外にも兵器全体の構造として他の兵器では確認出来なかった技術が多数使用されているのが分かりました。よってあの大型兵器はその後の兵器のバリエーションの雛型、或いはワンオフモデルとして建造された可能性が極めて高いと言えます」


と話を続ける。それを聞いて涙名が


「雛型、或いはワンオフモデルか……だとするとあの施設は新型兵器の開発、テスト場所も兼ねていたのかもしれないね。そう考えればあの施設に多数のデータが残されていたのも納得がいくよ」


と合点があった顔を見せるがその言葉に引っ掛かりを覚えた霊諍が


「多数のデータとは?」


と問いかけると涙名は更に


「今回この兵器の存在を知ったのは向かった先に合った施設を調査したから。そしてその施設には様々なデータが残されていたんだ。これまで入手した技術のデータのより詳細な活用方法、応用方法、そして問題の大型兵器のデータ」


と話を続け、それに続く形で星峰も


「だけど今回確認した悪意を力に変換するシステムのデータについては残されていなかった。これが何を意味しているのかは今の時点では分からないけど……」


と続ける。それを聞いた霊諍は


「問題の技術のデータは残されていなかったのですね。となると考えられるのはまだテストも行われていないか、或いは他の場所にデータが存在しているかと言った所ですか」


と話を続ける。その回答に異を唱える者は居なかった。その場に居た全員が同じことを考えていたからだ。


「そうね、一応そのデータも提供しておくわ。こちらで解析を行うつもりだったけどこれから別の形で忙しくなりそうだし。後で送信するわね」


星峰が軽い口調でそう話すと霊諍は


「そうして頂けるとこちらのお仕事も捗りそうです」


と笑顔で応対しそれに納得する。


「なら、そろそろ戻ろうか」


天之御がそう告げるとその場に居た全員が頷き、それによって了承を得た為転移妖術を使い一同はブエルスへと帰還する。帰還すると天之御はこれまでの様にその場で話し合う事は行わず、直ぐに全員に休息を取る様にだけ告げて自身も自分の部屋に戻っていく。そして自分の部屋に戻った後、ふと


「星峰……君の覚悟、確かに感じさせてもらったよ。そして、君と一緒なら……」


そう呟くがその顔にはどこか哀愁が漂っていた。そのまま部屋の本棚に向かい、一冊の本を手に取って捲り出す。否、それは本ではなくアルバムであった。中には天之御

のこれまでと思わしき写真がびっしりと張られている。その中の一枚を見つめ、天之御の視線は止まる。そこには幼い天之御と空弧らしき女児が写っていた。

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