第370話 渦中のコンスタリオ

「其れよりも気になるのはコンスタリオ小隊の方だよ。前回と言い今回と言い、ここ数回の作戦行動で明らかにブント側の部隊と行動を共にする事が増えてる。

この事から考えるとブントは完全にコンスタリオ小隊を取り込むつもりだよ」


涙名の指摘した部分は天之御、星峰も気付いてはいた部分ではあった。だがそう口にすることにより、三人が感じる懸念は更に強まる。もしコンスタリオ小隊がブントに取り込まれたら……星峰はそう考える度、内心に強い不安を覚えるのであった。


「星峰……」


彼女の内心の不安を感じ取ったのか、天之御がそっと声をかける。すると星峰は


「大丈夫よ、私、戦えるから」


本心であるとも強がり出るとも取れるその返答、その微妙な音程を感じ取ったのか


「戦えるのは良いけど、まずするべき戦いを間違えないようにね」


天之御はそう声をかける。


「するべき戦い?」


天之御の発言に対する星峰の返答は彼女にしては珍しく疑問形であった。それはその言葉の意味を掴みあぐねている事の表れであった。そんな星峰に対し天之御は


「コンスタリオ小隊と戦う覚悟の前に、取り込ませない為の戦いをするべきだって事。それも又ブントとの戦いなんだから」


と先程の言葉の真意を告げる。それを聞いた星峰はハッとした表情を浮かべ、若干の笑顔を見せる。天之御の言葉により、何かに気付いたのだろうか?


「そうね、その事が完全に頭から抜け落ちていたわ。取り込ませないためにまずは今できる戦いをする。それが重要なのよね!!」


そう語る星峰の口調は先程までより明らかに高い音程であった。その様子を見て天之御、涙名もふと胸を撫で下ろす。それだけ先程までの星峰は不安だったのだろう。


「さて、これからどう動くかな。今の所人族にすぐ次の動きは見られないみたいだし先史遺産の方も新たな情報は得られていない。この状況で今後有利に動くためには……」

「先日から問題になっているワンカーポ地下と森の巨大遺跡、この二つの調査を行うのがベストだと思う。どちらも放置して置くと問題になりそうだし、次の動きがみられないならその隙を突かないと」


天之御が今後の行動方針を考えると涙名はこう告げる。実際天之御もそれを考えてはいた。そして涙名と意見が一致し、自身の考えの確信を強めると


「そうだね、ならワンカーポの地下をまた調査してみよう。遺跡の方に比べればまだ問題が想定範囲内に収まりそうだからね」


と告げる。これは前回の森の遺跡調査が結果としてオアシスへの件まで広がった事への配慮でもあった。

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