第360話 不可解な幕切れ

「モイス、シレット、気が付いたのね」


目を覚まし、周囲を見渡した二人にコンスタリオが問いかける。その顔は優しげだが、その下には先程までの葛藤を覆い隠そうとしている部分が少なからずあった。


「そうか……俺達はあいつらに……」


モイスがそう呟くと一行の脳裏には記憶の中に刻まれている交戦、そして敗北の記憶がまざまざと蘇ってくる。以前より更に強くなり、且つまるで敵わなかった相手に三人は脅威を抱かざるを得なかった。


「敵も全員、以前交戦した時よりさらに強くなっていました……私達はあいつ等に勝てるのでしょうか?」


らしくなさを感じる弱気な声を呟くシレット、それ程までに今回交戦した魔神族の強さに脅威を感じているのだろう。だがその声に続けてモイスは


「だけどよ、妙じゃねえか?どうしてあれだけ強くなってんのに最後の最後でとどめを刺していかなかったんだ?」


と脅威ではなく疑問を口にする。それを聞いたシレットは


「他の目的を優先したんじゃない?ほら、奴らがワープする直前にそんな事言ってたし」


と回答を明言するがモイスは


「いや、それは分かるんだけどよ、俺達は正直あと一撃耐えられるか否かって所まで追い詰められてたんだぜ、其れだったら最後にとどめを差していくのが定石じゃねえか?」


とその疑問を引っ込めはしない。一見すると乱暴な論理にも聞こえるモイスの疑問であり、シレットは引っ込めない事に呆れ顔を見せるがそこにコンスタリオが


「そう言われると……確かにそうね」


とモイスの疑問に同意する発言をする。その反応はシレットにとって予想外だった。その直後に見せた困惑した顔がそれを物語っている。


「コンスタリオ隊長まで……一体どうしたんですか?」

「モイスが口にした疑問にも一理あると言う事よ。あの場でもし私達に向かって攻撃が加えられていたら私達はなす術がなかった。にも関わらずその場から去って行ったのよ。他の目的を優先しただけかもしれないけど、もし仮にそうでないとしたら」


困惑するシレットを落ち着かせる為か、コンスタリオは敢えて彼女に質問を投げかける。するとその意図を汲んだのかシレットも


「私達を……殺す気はなかった?」


と少し落ち着いた声で話す。


「その可能性はあるわね。当然、どうしてなのかという新たな疑問は浮かんでくるけど」


コンスタリオがそう話すとモイスは


「ああ、だが奴等にそれを後悔させるためにも何時までも寝てる訳には行かねえ!!」


といきり立った声を上げる。

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