第359話 コンスタリオ・コンクリフト
「……ええ、そうね」
コンスタリオはそういうと笑みを浮かべ、自身に生じた疑念を内心に押し込める。だがそれはアンナースに疑念を悟られない為というよりも自分自身が疑念から目を逸らしたいという気持ちの表れであった。コンスタリオが内心でそう思うのはアンナースを信じたい気持ちがあるからだ。
「アンナース……いえ、そんな事は無い。私はアンナースを、彼女を……」
疑念を払拭しようとするかのようにコンスタリオは内心でそう繰り返し呟く。まるで流れ星にかける願いの様に。最も、それがコンスタリオの願いであることは紛れもない事実なのだが。
「……さて、目が覚めた以上いつまでも寝ている訳には行かないわね」
アンナースはそういうとベッドから起き上がり、そのまま自分の足で立ち上がる。その印象はついさっきまで眠っていたとは思えない麩に気を漂わせていた。
「アンナース!?大丈夫なの、貴方」
先程まで寝ていたアンナースがいきなり立ち上がった事に困惑するコンスタリオ、彼女の体にはまだ痛みが残っており、とても立ち上がる事等出来なかった。だが同じ様に負傷したはずのアンナースは立ち上がっている。その事実は先程払拭しようとしたばかりのコンスタリオの疑念を早くも再燃させる。
「同じ様に負傷した筈なのに彼女は平然としている……やはり彼女は私達とは何かが違うの?いえ、例えそうだとしても私は」
先程と同様に内心でこう呟き続けるコンスタリオだが、呟けば呟く程その疑念は膨らむ一方であった。
「じゃ、私は先に行きますね。皆さんはもう少し体を休めて下さい」
コンスタリオはそう告げるとその場から足早に去っていく。その足が向いていたのは彼女の自室であった。そこに到着し、部屋の椅子に腰かけると
「それにしてもまさか彼が肉体を奪われていたなんてね……だとするとあの体を使っているのは誰?これは事と次第によっては厄介な事になりそうね」
と、先程までとは別人の様に重く暗い口調で口にする。そしてそのまま
「場合によっては周囲の判断を仰ぐ必要性もあるわね。さて、どう動くべきか……それにコンスタリオ小隊もそろそろ本格的にこちらに取り込みたいわね。今後は共同任務を増やしてもらうべきかしら?」
と続け、怪しい笑みを浮かべながら手元にあるグラスに水を灌ぐ。
一方、医務室ではコンスタリオが一人考え事をしていた。すると
「う、ううん」
「こ、ここは……」
という声と共にシレットとモイスが目を覚ます。
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