第358話 アンナースが見せる顔

「司令官……」


コンスタリオのその言葉は明らかに乱れが感じられた。どうやらこのタイミングでいきなり司令官が入ってきた事に戸惑いを隠せない様だ。


「私が受けた報告と貴方方が実際に経験した事が異なるというのであればご説明頂けますか?」


司令はコンスタリオに強い言葉でそう告げる。コンスタリオを攻めるような口調ではない、只はっきりさせたい、そんな口調だった。


「私達が交戦していたのは兵器ではなく魔神族の部隊です。それもブエルスやワンカーポが陥落した際の戦いで指揮を執っていた魔神族が指揮する」


コンsヌタリオがはっきりとそう告げると司令の顔色が明らかに変わる。どうやら想定していた回答よりも上の回答が返って来た様だ。それを証明するかのように


「それは本当なのですか!?」


と驚いた回答を返してくる。


「ええ、本当ですよ。私もその場で確認しましたから」


そう告げたのは司令の奥のベッドで眠っていたはずのアンナースだった。どうやら目を覚ましたらしく、先程のコンスタリオと同様に周囲を見渡している。それが単に寝ぼけている訳ではない事を証明していた。


「アンナース……貴方もそう告げるという事は事実なのでしょうね。ですが他の部隊の報告に魔神族の記録は一切入っていません。となると……」


アンナースの後押しに司令は一応の納得を見せつつも細部はまだ出来ていない様子を見せる。そんな司令にアンナースは


「恐らく差の場に居た魔神族の部隊は私達が交戦した部隊だけなのでしょう。それも私達を置いて他の場所に向かったという事は恐らく私達以外の何かが目的であり、それを果す為に移動した。そう考えてまず間違いないと思います」


と告げて自身の考えを念押しし更に


「他の部隊と交戦していないという事は戦力の規模からみて制圧が目的ではないと考えられます。今の内にオアシス周辺に人族に行動できる部隊を配置し、そう簡単に侵攻出来ない様にしておいた方が得策でしょう」


と今後の行動も助言する。それを聞いた司令は


「そうですね……オアシスの事が魔神族に知れたのであればこのまま放置して置く訳には行きません。直ぐにこちらの部隊を配置し、魔神族に対応出来る様にするべきですね。

幸い周辺調査の部隊はまだ残っています。彼等にすぐさま陣形を整えて頂きましょう」


と言い、そのまま部屋の外に出ていく。


「アンナース、貴方……」

「あのまま引き下がれないでしょ」


コンスタリオの発言に何時もの様に軽口で返すアンナース。だがコンスタリオが引っ掛かったのはそこではなく、司令に対するアンナースの強気で引き下がらない態度だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る