第357話 生じた齟齬

「……分かった、この件については僕と君で追って調査しよう。但し……」

「はい、星峯本人には悟らせない様に、ですね」


言葉を止めた天之御が空弧に極秘調査を約束すると空弧もそれに頷く。そしてこれに納得したのか空弧は黙って椅子から立ち上がり、そのまま天之御の部屋を出る。それを見届けると天之御も扉を閉じて部屋の中に入り、そのまま再び椅子に座る。だがその顔はかなり険しく、明らかに余裕が無い物であった。


「星峰……君の身に何が起こっているんだ……」


星峰の事が余程気掛かりなのか、その言葉は意識せずとも彼女の名を含む。同じ頃、


「う……ここは……」


と言う声と共にコンスタリオが目を開けていた。そして周囲を見渡す。そこは自分達が派兵されている拠点の集団治療室のベッドの上であった。辺りにはシレットやモイス、アンナースだけでなく今回の件で負傷したと思われる兵士も数十人が治癒を受けている。魔人族にやられたのか、それとも兵器との戦いで負傷したのか、見た目には判断がつかないが、今回の一件が相当な負傷者を出した事だけはその場の雰囲気から察する事が出来た。


「大丈夫なのですか?」


看護兵と思われる人族が目を覚ましたコンスタリオに話しかけてくる。


「ええ、何とか起き上がれるくらいにはね」


そうコンスタリオが返すと看護兵は何処か安心した顔つきになる。


「そう、それは良かったです。皆さんの負傷は特に酷かったですからね。一体どんな兵器にやられたのです?」


その返答を聞き、コンスタリオは一瞬ではあるが表情が変わる。自分達がやられたのは魔人族であって兵器ではない。この看護兵はその事を知らないのだろうか、そう思わずにはいられなかった。


「意識を失っている皆さんを他の部隊の兵士が見つけて運んできたんですよ。周囲には激しい戦闘の跡も確認出来ましたし、一体どんな兵器と戦っていたんです?」


同じ様な質問を二度も繰り返され、やはりこの看護兵はあの遺跡に魔人族が居た事を知らないのだろう。そう思ったコンスタリオは


「今回の一件、司令には報告がいっているのですか?」


と看護兵の質問を無視する形で問いかける。自分の質問を無視されたからなのか、一瞬看護兵の顔が拗ねた様な物になるがその直後元の表情に戻し


「ええ、行っている筈です。皆さんが負傷していたので別の兵士が報告に行くといっていましたから」


と返答する。だがそこに


「その報告に不備があるというのでしょうか?」


と言う声と共に司令が入って来る

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