第351話 顕現する悪意

すると天之御は


「魔王妖術……全知開眼!!」


と言い、目に妖力を集中させて兵器を見つめる。その様子を見て


「天之御様?何を……」


と岬が何かを言いかけるが天之御はその問いかけには答えず


「やっぱり……あの兵器にも亡霊が憑依してる。しかもその数、質共にこれまで兵器に憑依していた亡霊とは比べ物にならない位悍ましいレベルだよ!!」


と言う。それを聞いて空弧は


「じゃ、あの兵器が起動したのも、さっきの的確な行動も……」


と事態を察し、それに続く


「ああ、全て亡霊が憑依しているが故に起こっている事だ。あの兵器は只暴走て居る訳じゃない、明確な悪意を持って動いているんだ!!}


と言う天之御の言葉もその恐ろしさを裏付けていた。


「だとしたら、尚の事ここで破壊しないと!!あれが外に出たりしたら大変な事になる!!」


星峰はそういうと改めて剣を構える。だが兵器は突如として右手の銃を天井に向けて乱射し始める。それを見て空弧が


「!!何を!?」


と驚いているとそこに天之御の端末から通信音が鳴り響く。


「くっ、こんな時に……」


と言いつつも天之御が応対するとその相手は豊雲であった。そして通信機越しに豊雲は


「天之御様、問題のオアシス付近に人族部隊の第二派が向かっているとの情報が人族側の協力者より入ってきました。それも、恐らくはブントの部隊です。そしてその部隊が今下から何者かの攻撃を受けていました」


と天之御に告げる。それを聞いて天之御は


「何だって!?それじゃ、今……」


と今の兵器の行動の意味を理解し、同時に警戒感を強める。


「人族部隊は場合によってはこちらで出撃して食い止めます。ですが……」

「分かった、連絡ありがとう。長引かせる訳には行かなくなったね」


豊雲の伝聞を聞いて天之御は現状の危険性を察する。その危険性を具現化するかのように兵器は足元の加速装置を起動させ宙へと移動しようとする。


「浮かんで攻撃してくるつもりなの?」


涙名がそう呟くと天之御は


「否違う、あの兵器は天井を破って地上に出るつもりだ!!ついさっき上を通り過ぎた人族部隊の反応から生命が居る事を悟った地上に!!」


と伝える。


「何ですって!?あんなのが地上に出たら……それに亡霊は生命を区別無く虐殺する……そんな事を許したら!!」


星峰がそう叫ぶが、そう叫ばずともこの状況の危険性はその場にいた全員が既に察していた。

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