第350話 忌まわしき遺産

「こんな兵器を都市の中心部分で作っていたなんて……それに……こんな……」


薙ぎ払われた周囲とそれをした兵器が生命が大勢いたであろう都市の中心で建造、起動されているという事実に対し動揺を隠せない涙名。そんな涙名に対し


「だからこそ、この兵器を存在させておくわけにはいかない!!皆、行くよ!!」


天之御は彼を、そして全員を激励する。その直後星峰によって跳ね返されたビームでダメージを受けていた兵器が体制を立て直し、今度は左手に装着された斧を振り下ろして来る。動きが単調故に一行は難なく回避するものの、躱した斧は地面にめり込み、その地面にひびを発生させる。


「狐妖術……赤色の輪廻!!」


斧がめり込んだ隙を突き、空弧はそう叫んで目の前に出現させた陣から赤い渦を放ち、兵器と斧の接合部分を攻撃する。すると攻撃が当たった部分はみるみる錆付いていき、その強度を落とす。そこを狙って


「黒き凶刃!!」


と言って涙名が両手の爪を黒く染めて錆びた接合部分を攻撃し、その部分の破壊に成功する。


「左手の破壊に成功したか、ならば次は!!」


そういう八咫の言葉に応える様に空弧は再び妖術を使おうとするが今度はその前に兵器が体に備え付けられた機関銃を乱射してくる。


「くっ、そんな武装まであるなんて……」


防御態勢を取ったものの、一瞬たじろいだ空弧を狙い、兵器は右手に装備されたレーザーの狙いを定めようとする。


「空弧!!つっ……」


星峰はそういうと空弧に駆け寄り、機関銃の弾丸を手にした剣を回転させて撃ち落とす。すると兵器はレーザーの構えを止め、星峰に突進を仕掛けてくる。


「この兵器の動き、的確ですね」


今の一連の動きを見ていた岬がそう告げると


「ええ、全く持ってね。的確としか言いようのない動きだわ」


と星峰は納得した様子を見せるが八咫は


「的確って、どういうことだ?」


と理解しきれていない様子だ。すると星峰は


「この兵器、二度目の空弧の妖術を使用させない為に機関銃を乱射して動きを止めつつレーザーを構え、私がその前に立ち塞がったらあっさりとレーザーを引っ込めて突進を仕掛けてきた」


と八咫に告げる。星峰のその発言を聞いた八咫は


「成程、二度目は無いと言わんばかりっていう訳か。それは厄介だな」


と漸くというべきか、それとも早々というべきか分からないが納得した様子を見せる。だが今の発言を聞いた天之御は


「的確な動き……もしかして!!」


と何かを考える。

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