第352話 金色の星峰

その叫びを虚しい物にするかのように兵器は飛翔し、地上へと向かっていく。


「魔王妖術……漆黒圧壊!!」


天之御はそう叫ぶと兵器の周りの重力を操作し、その動きを封じ込めようとするが全く効果が出ず、兵器は飛翔を続けていく。


「重力操作が通じない!?そんな……どうして!?」


この光景に岬は天之御本人以上に動揺を隠せない声を出す。どうやらこれまでに前例がない事態の様だ。すると天之御は


「確証はないけど、妖術そのものを無効化しているのか、それとも重力操作に対抗する装備が搭載されているのか……何れにしても重力で押さえる事は出来ない。なら……」


と次なる妖術の構えに入ろうとするがその間にも兵器は地上に向かっていく。それを見た星峰は


「あんな物を……行かせる訳には!!狐妖術…黄金の両翼」


と叫び、四本の尻尾の間から黄金の翼を出現させ、それを背中に装着して兵器の後を追う様に飛翔する。それを見た空弧は


「星峰……」


とどこか思う所がある様に呟く。一方、飛翔した星峰は兵器を追跡すると追い越してその前に立ち塞がり、剣を向けて振り下ろす体制を整える。そして


「ここから先には……行かせない!!」


と言うとその翼を輝かせ、その輝きを全身に伝わらせ、剣を兵器の中心部分に突き刺す。剣を突き立てた星峰はそのまま加速して兵器を押し返し、兵器に輝きを流し込みつつ地面へと押し返していき、その勢いで地面に叩き付ける。その衝撃は凄まじく、辺りに砂埃が舞い、クレーターが出来そうな印象すら受ける。


「星峰!!」


落下した場所に天之御達が駆け寄るとそこには大破した兵器とその横で佇む星峰が居た。その背中の翼は既に消滅しているが、体には傷一つなかった。そしてそのまま星峰は天之御達の方を向き


「兵器の破壊には成功したわ。それよりも早く離脱を!!恐らく今ので人族部隊にも兵器の存在に気付かれたわ」


と言う。星峰の言う通り、今の光景は意識を失っているコンスタリオ小隊を除き、全ての人族部隊が目撃していた。その光景を目にし、涙名の端末に表示された図式から既に人族部隊がその場に集まりつつあるのは確認出来た。


「直ちに離脱するよ!!」


天之御はそういうと転移妖術を使い、兵器を回収しつつその場から離脱する。それから遅れてやってきた人族部隊は


「さっきの兵器、恐らく上層部が探していた兵器の一端だろうな……」


と口々に声に出す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る