第305話 楽勝と取り越し苦労

不安を感じたコンスタリオは飛空艇に搭載されているレーダーの精度を最大まで拡張し周囲に伏兵が居ないかを確認する。だがコンスタリオの不安や予想に反しレーダーには一切反応がかからない。


「隊長さ~ん、どうしたの~?」


近くに居たアンナースがいきなり話しかけてくるとコンスタリオは


「え!?ええ……何でもないわ」


と慌てて取り繕う。


「そう、ならいいんだけど~」


アンナースはそういうと魔神族部隊の迎撃を再開する。その言動からは今のコンスタリオの取り繕いに気付いたのかどうかは分からない。


「……このまま迷いを持っていては作戦遂行に支障が出るわね……今は目の前の敵に集中!!居ないなら居ないでそれでいいじゃない!!」


コンスタリオは内心でそう叫ぶと自身に言い聞かせ、目の前の魔神族の迎撃を再開する。だがそれはそう意識しなければ魔神族の裏を考えてしまう事の表れでもあった。

その後も人族の勢いはとどまらず、魔神族部隊をあっという間に追い込んでいく。

そして魔神はものの見事に蹴散らされ、大部隊は見る影も無い程に崩壊していった。


「今回は楽勝でしたね。これまでの苦戦が嘘のように思えるくらいに」


モイスがそういうとコンスタリオは


「そうね。確かに何時もこんな調子ならいいのに」


と表面上は笑顔と喜びを見せる。だがその内心では


「だけど部隊が大規模なのに侵攻作戦が杜撰過ぎる。それに結局伏兵も居なかった。これは一体どういうことなの?」


と疑念が消えるどころか益々深い物へと変貌していった。


「さて、無事に進行を食い止めることが出来た訳だし、司令に報告に行かないとね」


アンナースのその言葉を受け、コンスタリオ達は拠点本部へと帰還していく。だがこの戦いの一部始終を見続けていた者が居る事にコンスタリオ達が気付く余地はなかった。その見ていた者とは当然、魔神族の魔王達であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る