第306話 違和感の正体
「厄介な事をしてくれたね……否、元から狙いはそれだったんだろうけど」
天之御が険しい顔でそう告げる。その場には先程の戦場には居なかった側近達も集まっていた。
「ええ、今回はかなり巧妙に芝居の打ち合わせを重ねていたんでしょうね」
空弧も天之御と同様、険しい顔でそう語る。
「今回侵攻した部隊もバガールもブント側の都市、そしてその両者にコンスタリオ小隊を噛ませる事や大規模な部隊を編成する事で芝居の疑いを薄めている。この位であれば問題は無いのですが……」
「ええ、問題はこれによってバガール、そして例のオアシスや拠点の防衛が更に強固になってしまう可能性が高いという事ね。侵攻を受けたとなれば戦力増強の口実にも出来る。そしてそれ以上に迂闊な動きが取りにくくなる」
岬の口から出た今回の一件による懸案事項に星峰が補足を入れる。
「このタイミングでこんな侵攻を行うという事は、あの付近で何か知られたくない物、見られたくない物が出てきたという事なのか?」
「その可能性は高いけど、現状でそれを直接確認しに行くのは中々難しいだろうね。人族は襲撃を受けたって事で神経を尖らせているし、こちら側はブントの作った人工生命とはいえ表面上は損害を受けてる。直ぐに仕掛けるのは不自然すぎる」
八咫の疑問に対し天之御は肯定しつつも現状でそれに対処する事は難しいと暗に告げる。
「今回の襲撃に対し、現地の部隊は何と?」
「部隊長が独断でやったって事にして方を付けようとしてる。既に処分も決定しようとしているみたいだけど……」
だけど……と言う言葉に引っ掛かりを覚えた涙名、当然
「だけど……と言う事は?」
と問いかける。
「そうは問屋が卸させないよ。魔王の権限で詳細をきちんと調査、説明する様に指示してある。最もそれにも期待は出来ないけど、少なくとも有耶無耶にして幕引きって形にはさせないつもりだよ」
天之御はそういうとその場に居た全員の顔を見渡す。顔色を伺っている訳では無い、自分の決意が伝わったかどうか確認したい訳でも無い。だがその真意は届いたのか
「ええ、相応の責任は取らせないと」
星峰も天之御に同調する。だがそこに帰省していた豊雲が
「しかし、先程人工生命とおっしゃいましたが、では既にブントは……」
と天之御の発言の中に会った引っかかる部分を問いかける。
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