第303話 穏やかではない朝

しかし、椅子にうなだれる様に腰かけるその姿と顔からは疲労が見て取れ、それ故なのか考えも纏まっていない様子だ。


「今日は色々あり過ぎたわね……地下にいきなり引きずり込まれたと思ったらそこに今後の命運を左右する物が眠っていて、そしてそれを守る兵器に苦戦して……駄目ね、考えれば考える程思考が混乱する」 


そう呟くコンスタリオ、実際その通りなのだろう。普段ならともに動いているはずの手も今日は止まったままだ。だったらいっそのこと今日は考えるのを止めてしまおう。その考えに行き着くのに時間はかからなかった。そう考えたコンスタリオはすぐさま立ち上がると部屋の浴槽に湯を張り、その中に浸かって体を癒すとそのまま寝具を身に纏い、ベッドに横たわる。余程疲労していたのだろうか、その目は横になるのとほぼ同時に閉じられ、翌日の朝まで開く事は無かった。

だがその翌日の目覚めは平穏なものではなかった、何時もにも増して唐突に鳴り始めた警報で目覚める事になったからだ。警報で目覚めたコンスタリオはすぐさま軍服を身に纏って拠点内の広場に向かう。警報時は原則そこに集結することになっていたからだ。そこには既に司令やアンナース、モイスとシレットも集結していた。


「先程この大陸の軍部より通信が入り、魔神族の部隊がバガールに侵攻中であるとの連絡が入ってきた」


集結した面々の前に立つ司令はそう告げる。その内容を聞いたコンスタリオ小隊以外の面々はざわつき始める。


「何をざわついているんです?そのバガールというのは?」


シレットが問いかけるとアンナースが


「ここ西大陸の中でも最大級のタウンです。他の大陸で言えば首都ですね。西大陸はそれぞれのタウンが独自に自治を保っている以上、首都という言葉はつきませんが」


と説明する。


「つまり、最大規模のタウンと言う事ですね。でもどうしてそこに魔神族が……」


コンスタリオが疑問を口にするがアンナースは


「目的は分かりません。ですが万が一そこが陥落するようなことになれば東大陸の二の舞となる可能性は十分考えられます。ワンカーポが陥落した様に」


と不安にならずにはいられない発言をその口から出す。その顔にもおちゃらけは感じられず、それが事実であると言う事をコンスタリオが判断するには十分な材料であった。


「侵攻中の魔神族部隊の規模はかなりの物であり、且つ今アンナースが言ったような事態は何としても避けなければならない。よってこちらからも戦力を派遣しバガールの陥落を何としても阻止する必要がある」


司令はそう告げると魔神族の迎撃に向かう部隊を口に出す。その中にはコンスタリオ小隊も含まれていた。

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