第290話 自分自身で!!

「先天的と言う事はつまり、兵器との連携を取っていた兵士と同様、あらかじめ決められた役割の能力を引き出されているという事だね」

「ええ。ただ、指揮官と言ってもそれが戦場での指揮に限られている以上、兵士と同様に数が増やされているのはまず間違いないと思う。

最も指揮官だけ沢山いても仕方ないから兵士よりは少ないかもしれないけど……」


そう言った会話をする涙名と星峰だが、その内心には確実に怒りがあった。双方の言葉の中にそれは隠されていた。


「列車を破壊し、その破片で俺達を攻撃してきたのも指揮官としての能力を高められたが故と言う事なのか?」

「恐らくはね。あの状況で列車を破壊し、その破片で攻撃されたら回避は困難だから。そして味方を巻き込むことについてはそもそも考慮していなかった。指揮官としての合理的判断からね」


八咫の問いかけに対しても星峰は淡々と答える。だがその淡々さが逆に内心の怒りを表している様に周囲は感じていた。


「既に実践投入がされているとなると、少なくとも放置していたら今後の脅威になる事は間違いない。可能な限り早く対処する必要があるね。現状、ブントがヒューペットを戦力として投入してくるのはもう避けようがない。だとすると……」

「今回入手したデータを速やかに協力者に提供し、備えをしてもらうというのが最善の策でしょうね。協力者への呼びかけがあれば備える事も出来るでしょうから」


天之御と星峰の会話の結論に異を唱える者は居なかった。それ以上に最善の策を出せなかったからだ。


「なら僕は早速その作業にかかるよ。皆は一度部屋に戻って今回の事を自分なりに整理して欲しい。自分で整理するというのも又必要な事だと思うから」


天之御は何時もの休息をとって欲しいではなく、敢えて自分で考えてほしいと伝えてその場を解散させ、一同はそれぞれの部屋に戻っていく。


「生命を完全に道具に……やっぱり、あの連中は……」


部屋に戻った空弧はそのまま椅子に座り、即座にそう呟く。その姿は脱力している様にもどこか落胆しているようにも見える。


「自分で考える……か。私も何時までも……そろそろ向き合わなければならないのかもしれないわね」


椅子に座って暫くすると空弧は不意にそう呟く。そして椅子から立ち上がると部屋の片隅に置かれている一冊のファイルを手に取る、否その中身はファイルではなくアルバムだった。そこに入ったいた写真はどれも古く、幼い空弧らしき存在も写っていた。だがその写真はどこか不自然さがあった。

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