第291話 不吉な会議
その写真を見つめ、何処か複雑な顔を浮かべる空弧、体が違うのだから今の自分と外見が異なっているのは当然だがその写真の不自然さはそこではない、その写真を見つめる空弧の表情がよりそれを物語っていた。その顔は懐かしさに耽るようなものではない。寧ろ写真に対して嫌悪感すら抱いている。そんな表情であった。
暫く写真を見つめた空弧が一通りその写真に目を通すとアルバムはバタンという少し強い音と共に閉じられ、元あった場所に無造作に放り込まれる。そして写真を見終えた空弧は疲労が襲って来たのかそのまま寝具に横たわると眠りに落ちていく。
同じ頃、某所において
「へえ、奴等が地下施設に……」
「ええ、ヒューペットコマンダーNo1945が報告してきました。そしてその報告によれば内部のデータは既に奴らの手に落ちたとの事です。」
という会話が行われれていた。その内容からするとブントの上層部の会話の様だ。
「やれやれ、ワンカーポが陥落した事がここまでストレートに響いてくるなんてね~これも東と西が競ったからなのかな~?」
何処か茶化している様にも思えるこの声に対し最初の声の主は
「ああ、まさか奴等があれだけ早くワンカーポを陥落させてくるとはな。だが既にあのデータが計画のベースになっている以上、今から変更というのも中々に難しい。
その為にもこの西大陸のあれは何としても抑えねばならん、分かっているな」
「ええ、勿論ですとも。その為にコンスタリオ小隊を含むブエルスの戦力も派遣したのですから」
「本当に助かるよ~彼等はイェニーの遺産を相続した者たちだからね。そして嬉しい事にその遺産の真髄を引き出してくれている。これなら今後の調査も捗りそうだよ」
茶化しているのか、真剣なのかどちらか分からない口調で話し続ける何者か、その何者かに対し二番目の声の主は
「さて、キャベルの方も遅れは取れないですね。例の地下通路を早く拡張しなくては」
「お願いね~キャベルは戦力が多いから奴等も早々は仕掛けてこないだろうし。でもそうなると今回地下を知られたのが痛いよね。多分ブエルスを狙っていたのはばれただろうし」
「ヒューペットの調整も並行して行います。行く行くは西大陸にも派遣出来る様に」
何処か不吉な予感を漂わせる内容で終始某所での会話は行われていた。
翌日、渦中の西大陸に滞在しているコンスタリオが起床し、指令に会いに行くと司令の様子がどこか妙であった。
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