第278話 地下通路再び

「天之御様、ご連絡をお待ちしていました」


豊雲はそう返答すると言葉を止める。恐らくは返答を待っているのだろう、続けての報告が無い事からワンカーポの状態が特に変化していないと予測した天之御だが


「分かった、それで何か変化はあった?」


と敢えて問いかける。その返答は


「いえ、現状では特には。あれ以降兵器の侵攻はありませんが逆にこちら側の新たな発見もありません……」


と天之御の予測通りであった。無論天之御がこの質問をしたのは豊雲を信じていない訳ではない。


「それで、あの通路の二回目の調査を今から行いたいと思う。それによる支障は何かない?」


天之御がそう問いかけると豊雲は


「勿論支障が出ないようにしてありますよ。事前通達も受けていますし」

「そうだったね、僕としたことがうっかり失念していたよ」


天之御の表情だけを見るとそれは本当に失念している様子だった。だが本当にそうなのか?星峰は少しその点を考えていた。だが


「なら皆行こう、今度は別のエリアを探しに」


という天之御の発言でその思考もどこかに行ってしまう。その直後、天之御の転移妖術で一同は前回調査した時に発見した最深部の培養施設へと移動する。


「今回はこっちから移動するんですか?」


空弧がそう尋ねると天之御は


「うん。今回は壁の向こう側とかを調べる調査だからね、こっちから行けば仮に何もなかったとしたら直ぐに外に出て豊雲達と合流出来る」


とその理由を含めて説明する。そして一同は前回と道順を逆にして壁等を調べ始める。しかし、そう簡単に隠し通路等見つかる筈も無く、少しずつ進んでいくほかなかった。だが施設から入口への中間地点n差し掛かったあたりで


「……なあ、少し妙じゃねえか?」


と八咫が不意に口を開く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る