第252話 コンスタリオの哲学

シレットとモイスの傍を足早に通り過ぎ、現地で割り当てられている待機部屋に戻ったコンスタリオだったがその顔は優れず、寧ろ部屋を出た直後より沈んでいる様にすら見える。


「二人には妙な態度を取ってしまったわね……いえ、寧ろこれで気付かれたかもしれない」


そう呟くと決して軽くはない自己嫌悪を抱く。先程の行動がらしくなかった事、心配をかけまいとして却って心配をかける態度だった自覚からだった。それ程までに今回の件の動揺はコンスタリオを揺るがしている。


「……駄目ね、考えない様にすればする程逆にどんどん考えてしまう。だったらもういっその事……」


コンスタリオはそういうと部屋に置いてある軍用端末を起動し、そこからネットワークを通じて各地の情報を収集し始める。


「スターの体を奪ったのは現在スターの体を使っている魔神族と考えてまず間違いない。そしてもしこの最悪のケースが的中しているとしたら今スターは今まで何度も交戦しているあの少女魔神族の体を使っているという事になる。

だとしても何故私達と交戦し、更に人族部隊の兵士まで攻撃する必要があるの?敵を欺こうとしているにしては期間が長すぎる。更なる最悪のケースとして考えられる物もある。だけどそうだとしたらそれをスターに決意させたものは……

やはり、この戦いには私達の知らない何かが蠢いているというの……だとしたら今回の進撃もその蠢きと関係しているのかもしれないわね」


コンスタリオは各地の情報を収集しつつ、そうした考えを口にしていた。考えないようにしても考えてしまうのであればいっそとことん考えてみようと転換したのだ。そしてその考えは幸か不幸か、現在スターと自分達が置かれている状況の真実と一致しつつあった。その時、ドアをノックする音が聞こえてくる。


「あっ、どうぞ」


思考に集中していた故に一瞬困惑するも直ぐに平常心を取り戻し、ノックの音に反応する。すると


「入りま~っす」


という声と共にアンナースが部屋に入ってくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る