第251話 ざわつく胸中

「実はその兵士の中の一人が妙な事を話しているのです。敵の中にスター・ボレードが居ると」


通信先の兵士が訝しげな顔でそう告げる、だがコンスタリオにとってそれは体を奪われたスター、つまりスターの体を使った魔神族が敵の中に居たという意味にしか解釈出来なかった。


「その事実については我々も」


コンスタリオがそう言いかけたその時、その相手側の兵士が


「我々もスター・ボレードが体を奪われた事は承知しています。ですがその兵士はそうではなく、迎撃に現れた魔神族が使った技がスター・ボレードが放った技だというのです。以前同じ技を受けて手合いに負けた事があると」


と告げ、コンスタリオの顔も訝しげなものに変わる。


「手合いで受けた事がある技と同じ技を魔神族から受けた?ですが……」

「その兵士がスター・ボレードと手合いをした事があるのは記録にも残っている事実です。ですがそれだけでそこまで判断出来る物とは思えませんが技の技量までは体を奪えても奪えないのではとも思いまして、一応ご連絡をした次第です」


奇妙な証言である事は承知しつつも引っ掛かりを覚え、その為に連絡してきたのだという兵士、其れを聞いたコンスタリオは


「……まさかね……」


と自身に言い聞かせる様に内心で何かを呟く。だがそれでも内面に生じた不安を取り払うには至らず、懸念が胸中をざわつかせる。


「その兵士についても情報は可能な限り聞いておきます。そして詳細が不明とはいえ交戦があったのは事実です。今後魔神族との睨み合いが厳しくなる可能性は否定出来ないでしょう。その点についてもお気を付け下さい」


兵士はそう告げると通信を切る。だがその後もコンスタリオの胸中に生じた懸念とざわつきが消える事は無い。


「スター、貴方は今何処に……会いたい、会ってこの不安を」


振り払おうとすればするほど逆に増していく、不安の糸が徐々にコンスタリオの心を縛りつつあった。

部屋の外に出たコンスタリオに


「で、どんな内容の通信だったんですか?」


とシレットとモイスが話しかけてくる。


「この大陸内で人族謡の一部が勝手に魔神族に攻撃を仕掛けて返り討ちにされたらしいわ。だから今後魔神族との睨み合いが激しくなるかもしれないとのことよ」


コンスタリオはそれだけを告げるとさっさと行ってしまう。それを見たモイスが


「なあ、シレット……」


とそっと小さな声で耳打ちすると


「ええ、多分……ね」


と何かに納得した声で返答する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る