第217話 苦く痛い記憶
「あれは……何なの?」
岬が星峰に問いかけるがやはり起こった現象が減少であるが故か、その声は少し強張っており、立っているだけにも関わらず顔を近づけ、迫っている様な鬼気がある。その声に反応したのか、或いは脅威に感じているのか、星峰の顔も険しい。
「岬の心の中にある最も畏怖している対象を模して実体化させた。これが一番可能性が高いと思う」
そんな星峰が出した回答はこれであった。その回答に険しい顔の岬は困惑した顔に変わり
「私の……最も畏怖する存在?」
と声も困惑した物になる。更にそれに続いて天之御も
「僕も星峰と同意見だよ。岬が一人残されたのも、僕達が飛ばされていた場所もその意見を後押しするには十分な材料になる」
と星峰の意見に賛同する。
「皆さんが飛ばされていた場所……そういえば、皆さんは何処に?あの光の後姿が見えなくなっていましたが」:
岬は思い出したかの様に告げる。それ程までにあのときの岬は劇場にとらわれていたのだろうか。そう思うと他の面々の顔も複雑なものになる。
「今から説明するよ」
そう天之御は言うと自分達がどんな場所に飛ばされていたのかを説明する。それを聞いた美咲はみるみる顔色を変え、浮かんでいた困惑を益々強くする。
「大丈夫なの岬?さっきから顔がどんどん……」
心配した空弧がそう声をかけるが、それをするまでもなく岬が大丈夫でない事は誰の目から見ても明らかであった。
「ええ、大丈夫よ。続けて下さい」
言葉はそういうものの、その言葉は最早空元気にすら聞こえない、見えない痛々しく弱気な言葉であった。
「その前に一つ聞かせてほしい。今説明した現象は岬、君の実体験なの?」
天之御のその質問に一瞬沈黙する岬、だがその直後
「……はい」
とそれが事実である事を認める。
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