第212話 目先の急変

そこはついさっきまでは平穏だった筈の街が突然爆発し燃え上がっており、更にその入り口では魔神族の女の子がしゃがんで泣き叫んでいたのだ。先程遠くで見ていた時にはこんな光景は広がっていなかった筈なのに。


「ど、どういう事だ?さっき見ていた時はこんな光景は……」


思わず動揺した声を挙げる八咫、そんな八咫に対し


「分からないけど、これを放置して置く訳には行かないわ」


と言い、女の子に駆け寄っていく星峰、嘗ての自分を重ねているのかその動きは迅速というより焦りが優先している様にも見える。


「あ、一寸、星峰!!」


涙名の制止も無視して女の子に駆け寄り


「一体何があったの?」


と問いかける星峰。だが女の子は泣き続けるばかりである。どうやら近くに星峰が居る事すら気付いていない様だ。


「くっ、仕方ない。まずはこの子だけでも……」


そう思った星峰は女の子の手を取り、ひとまず非難させようとする。だが星峰が女の子の手を取ろうとしたその時、その手は女の子の手をすり抜けてしまう。


「えっ!?今のは何?」


その光景を見た涙名が思わず声を上げる、それは少なくとも生きている存在であれば起こり得ない現象であるからだ。


「手がすり抜けた……?ならその女の子は……」

「いいえ、違うわ」


豊雲が何かを言いかけるがその答えを予想したのか空弧は聞き終える前に違うという言葉を口にする。その声には何かの確証がある様だ。


「違うとは?何が違うというのです?」


納得出来ないという声で豊雲が問いただすがその返答をしたのは天之御だった。


「その女の子は亡霊じゃない。その顔を良く見て。誰かに似ていると思わない?」


天之御がそういうと一同は一斉に女の子の顔を見る。そして次の瞬間


「!?まさか!?」


と言い、驚きを声と口に出す。そこで天之御が


「そう、その少女は岬だよ」


と告げる。その声は明らかに確信を持った声だった。

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