第213話 忌むべき記憶
天之御の発言の後にその少女の顔を見るとその顔は確かに幼いながらも岬の印象を確実に残していた。それだけではない、身体的な特徴も幼さを除き完全に一致していたのだ。
「ど、どういうこと何です!?幼い岬様がどうして私達の目の前に、それに手が触れられないなんて、私達が幽霊になって過去に来ているとでも言うのですか!?」
豊雲が混乱した口調で話す、だが天之御はそんな豊雲に対し落ち着いてと言いたげに手を差し出す。そして
「違う、僕達が来ているのは過去じゃない。ここは恐らく岬の精神世界、記憶の中なんだ。つまり、今目の前に映っている光景は岬が僕達の元に来る前、実際に体験した出来事なんだよ」
と告げる。
「それじゃ、この光景は……それにあの燃える街は……」
涙名はそう言いかけて言葉に詰まる。これが岬の記憶だとするなら岬は目の前で街を燃やされる体験をした事になるからだ。その後の言葉が出ないまま、少しの沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは
「さて、種が分かった所でこの世界から脱出する術を考えないと」
という空弧の一言だった。その言葉に一同は頷き、同時に決意を新たにする。その直後、周囲をが再び靄に包まれる。
「この靄、又……」
再び現れた靄に困惑する八咫だがそこで星峰が
「!!この靄の間に感じる……僅かだけど何かの乱れを」
と言い、剣を持ってその靄の一部を切り裂く。
「星峰!?一体何を……」
空弧が困惑した声を上げるが星峰の斬撃が終わった次の瞬間、周囲の空間に罅が入っていく。そしてその罅が広がり、硝子の様に砕け散ると一同を包む靄が消え、その空間は一同がもと居た火口に戻ってくる。だがそこには先程まで居なかった大型兵器とそれに全身傷つきながらも一人立ち向かう岬の姿があった。
「岬、大丈夫!?それにあの巨大兵器は……」
傷ついた岬に駆け寄り、心配する声をかける天之御、だが岬は
「あれは……あの兵器は!!」
と言い、傷つきながらも尚も向かって行こうとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます