第211話 世界を覆う靄

「う……あの光は一体」


光で目が眩んだ星峰が目を開け、視界が復活するとそこは先程までの火山の火口とは明らかに違う靄の様な物に包まれた空間に居た。周囲を見渡しても靄ばかりであり、他の面々の姿も見えない。


「天之御……涙名……皆、何処!?」


周囲を見渡しても姿が見えない事に気付いた星峰がそう声を上げる。だが声に対する返答は無く、星峰の内心に焦りが募る。その焦りが行動に出てしまったのか、思わずその場から走り出す星峰、だが少し行った場所で


「星峰、こっちだよ!!」


と呼び止める天之御の声が聞こえる。その声を聞き逃さなかった星峰はすぐさま声の方向に足を向けなおし走っていく。するとそこには天之御だけではなく他の面々もいた。涙名が


「星峰も見つかったね、後は」


と安堵の声を挙げる。だがその安堵の声の中身はまだその場に全員が揃っていない事を意味していた。星峰がその場に居た面々の顔を見渡すと一人欠けていたのだ。


「岬が居ない……」


そう星峰が口にすると天之御は


「うん、ここに着いた直後から彼女の姿だけが確認出来ない。あの光が一体何だったのかも分からない。恐らく転移系の魔術あるいは妖術だとは思うんだけど……」


と岬がまだ見つかっていない事とここがどこなのか正真正銘に分からない事を告げる。


「こんな風景、これまで見てきた世界中のどこにも無かったです」


周囲を見渡す空弧、その動作はこの言葉が真実である事を物語っていた。青白くどこか冷たさを感じさせ、全てを見えなくするような靄に包まれた風景、このままいては心まで蝕まれそうだと思える。


「兎に角、岬を探そう。話は……」


天之御がそう言いかけたその時、突然靄が晴れ始める。靄が晴れた後、一同の目に入ってきた風景は火山の外で見ていた風景と然程変わらず、ここが西大陸のどこかなのではないかという推測は容易に出来た。


「この風景……さっきまでいた火山の外に似ていますね。と言う事は」

「それを確かめる手段ならあそこにありそうだぜ」


空弧がその事を告げようとすると八咫はある方向を指差す。その方向には街があった。その街に向かえば情報収集が出来るだろう、そう考えた一同はひとまずその街に向かう事にした。だがその街に近づき、あと少しで到着するというその時、一同の目に


「!?」


と思わずにはいられない信じられない物が飛び込んでくる。

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