第206話 饒舌な岬

「うん、ブントが何かを企んでいるのは明白だからね。これ以上此方も黙って観ている訳には行かない。その目的が先史遺産の入手であるにせよ違うにせよ動く必要がある」


天之御が静かに、しかし強い声でそう告げるとその場にいた全員が頷く。それは覚悟の証でもあった。そして翌日の朝、再び謁見の間に集まった一同、その表情はどことなく硬く、見方によってはこれまで経験してきたどの作戦よりも硬い表情を浮かべているとも言える。最も、それは当然でもあった、これまでの敵対部隊に対する作戦とは違い、今回の調査は敵は身内にありと言う状況での調査と言うこれまでに例が無い調査なのだから。


「さあ、皆行くよ、準備はいい?」


天之御がそう告げると


「ええ、何時でも構いません!!」


真っ先に返答の口火を切ったのは岬だった。その言葉はやはり昨日と同様、何かを秘めて居る様に聞こえる。その感覚を星峰は聞き逃していなかったがその場では敢えて追及はしなかった。ただでさえ前例のない作戦なのだから余計な動揺を与えたくなかったのだ。そして一同は転移妖術を使い、目的地八代城街付近に移動する。

目的地周辺に移動すると街は一同の眼の前にあった。


「目的地は目と鼻の先ですね……しかし」

「涙名の言いたい事は分かるわ。暑いわね」


一同のワープした場所はかなりの猛暑であり、長くいると干からびてしまいそうな気温だった。


「ここ八代城街は近くに八代火山っていうこの世界でも最大級の火山があるからね、暑いのも無理はないわ。そして、これに慣れるのは中々に難しいの」


岬の解説に涙名と星峰は頷くが、ここでもやはり岬が先導して説明する事にどこか引っ掛かりを星峰は覚える。

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