第180話 安息をもたらす闇

「又兵器!?でもそれならどうしてこの靄が……」


岬がそう呟くと同時に兵器は一斉に攻撃を仕掛けてくる。一同は散会し攻撃をかわすが兵器は動じる事無く攻撃を続けてくる。だがその動きは明らかにこれまでの兵器と異なっていた。


「どうなっている?反応速度がこれまでの兵器とは段違いに早い。否、これだけの反応速度を機械が出す事が可能なのか?」


その違和感を指摘したのは八咫だった。八咫の言う通り、今目の前にいる兵器は明らかにこれまでの兵器と比べ一同の動きに対する反応速度が段違いに優れていた。それは機械とは思えない速度で反応している。明確に意思を持つ者でなければほぼ不可能な芸当であった。


「自己学習っていうのはこうまで学習してくるものなの?」


攻撃を回避しながら涙名はそう呟き、そのまま兵器に接近して爪で攻撃するが兵器に躱されてしまう。その一瞬の隙を突いてきた兵器の攻撃を受け止め激しい火花が散る。


「いえ、これは学習してるんじゃない……さっきと同じ亡霊の行動よ!!」


空弧がそう叫ぶが、星峰以外の面々は困惑の顔を浮かべるだけだった。その言葉の意味が直ぐには理解出来なかったのだ。それを察したのか、星峰は


「空弧の言う通り、この靄はやはり亡霊が出現している証なの。そしてその亡霊は今、私達が戦っている兵器を依代にしているわ!!」


と空弧の説明を補足する。その補足の甲斐があったのか、涙名が


「つまり、この兵器には嘗てこの世界に生きていた生命の亡霊が憑依してるって事?」


と言うと空弧と星峰は黙って頷く。


「成程、つまりは生命の思考の柔軟性と兵器の殺戮能力を併せ持っているって訳か。なら、猶更放置は出来ない!!」


天之御はそういうと


「魔王秘術……深淵の浄化!!」


と言って扇形にこの上ない漆黒の闇を放ち、その闇を全ての兵器に当てる。すると闇が当たった兵器が瓦解し、その場に崩れ落ちていく。だが今の闇の力がそれだけではないのを星峰と空弧は感じていた。それを隠し切れないのか


「天之御(様)今の技は……」


と唖然とした顔で声を揃えて言う。問いかけを受けた天之御は


「今の闇は亡霊を浄化し、安息を与える闇だよ。災いをもたらす世界に留まるなんて悲しすぎるからね」


と神妙な顔つきで言う。実際、悲しい気持ちになっているのだろう、それ以上何も語らず、又周囲も何も聞かず、一同は施設を後にし、先史遺産の遺跡を後にするのであった。

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