第179話 おぞましき学習

データルームの捜索を行う一同だが構造も分からない建物でそう簡単に見つかる筈も無く、途中何度も迎撃用兵器との交戦を強いられる。そこまで手強くはないもののこれまでよりも明らかに力が強い兵器に流石に余裕とはいかない。


「簡単には見つかりませんね、データルーム。更にセキュリティーも硬い」


一同の行く手を阻んでいるのは兵器だけではなかった。施設内にの扉を閉ざし、行く手を遅らせるセキュリティーの解除にも尚、時間を要していた。それでも何とか解除を繰り返し、漸く目的のデータルームに辿り着く。そこは正面一面にモニターが所狭しとおかれており、一度に幾つものデータを表示する事が出来る様になっていた。


「凄い数のモニター……これに一度にデータを表示させるとしたら一体どれだけの負荷がかかるというの」

「極限まで合理化していると言う事なのか?しかし、これを処理する生命側の負担も相当な物になると思うけど……」


星峰と天之御でさえ、そのモニターの数を見て驚かずにはいられなかった。それ程その部屋の光景は異常だったのだ。だが光景に呟いたところで返答が返ってくる筈も無い。それが分かっている一同は機器を操作し、データを表示させて調べていく。

ある程度調べた所で


「凄いわね……」


そう星峰が呟く。その呟きに反応し


「何が凄いの?」


と涙名が尋ねる。すると星峰は


「兵器のデータを調べていたのだけどまず武装からして今まで交戦してきた兵器とは違うわね。より効果的、合理的な視点に立って建造されているわ。更に自己学習能力もある。もしこれが量産されたら大きな脅威になるわね」


と告げる。


「自己学習?」


その言葉が引っ掛かったのか、空弧が問いかける。その問いかけに


「ええ、端的に纏めると交戦する事で人間と同じ様に行動パターンを学習しそれを応用してくるのよ。しかも機械であるが故に躊躇い無く攻撃する方向にね」


と星峰は返答する。だがその返答だけでもその兵器の脅威は十二分に感じる事が出来た。その場に居た全員の顔が強張った事がそれを証明していた。


「他にも色々なデータが出てきているわね。でも光学迷彩についてのデータはここにはありません。恐らく他の施設で研究されている物と推測出来ます」


一通りのデータを調べ終えた後、星峰がそう告げる。それを聞いた天之御は


「分かった。今日の所は一度戻ろう。これだけの施設を一度に捜索するのは不可能だ。又日を改めて調査するしかない」


と言い、その場から立ち去ろうとする。それに続いて一同もデータルームから出ようとするがその直後に再び靄が包み込み始める。


「この靄……さっきと同じ!?」


空弧がそう呟いた直後、靄の中から幾つもの兵器が現れる。

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