第181話 霊猫の使命

遺跡を後にし、集落へと戻った一同、そこに


「天之御様、遺跡の調査は終わったのですか?」


という声と共に霊諍が駆け寄ってくる。


「霊諍、どうして君がここに?」


天之御が問いかけると霊諍は自身がここに居る理由を話し始める。それによれば霊諍は今回の決断に至った経緯を説明し、今後の方針を決める為にここに来たのだという。その言葉は今回の決断がそれだけ大きなものであったという事を意味していた。改めてその事実を知り、一同の顔も険しさを増す。


「それで、遺跡の調査の方はどうなりました?」


霊諍の問いかけに対し、天之御は遺跡の中で起こった事実をありのままに全て話す。規模の大きさから一度に全てを捜索する事は出来なかった事、兵器の事、

これまでの遺跡とは明らかに違う事、亡霊の事を全て。重大な決断を下してくれた霊諍に対し隠し事をするのは失礼だと思ったからだ。だがそれに対する返答は


「そうですか……やはり災いをもたらす者が……」


という予想外の物であった。それに一同は困惑する。もっと重大な狼狽えを見せるかと思っていたのもあるが、それ以上に霊諍が亡霊について何か知っている様だったからだ。


「やはりって、貴方達が言うその災いをもたらす者って言うのは……」


星峰がその意味を問いかけると


「皆さんが交戦したというその亡霊の事です。先史遺産の遺跡が世界として機能していた頃、何らかの戦争が起き、その際の残留思念が亡霊として作用している物と考えられています。この辺りは皆さんの予想通りですね。

そして我々霊猫族がこの地を守る命を受けているのはその災いが地上を侵食するのを防ぐという役目もあるのです」


と霊諍は返す。


「つまり、君達の使命は先史遺産を守っているようでいて実際は地上世界も守っていたと言う事か……くっ」


八咫はそういうと目線を横に向け乍らどこか苦々しい表情を浮かべる。使命を単なるそのままの意味に解釈し、それ以外の視点を持てなかった自分を恥じているのだ。それは他の面々も同様らしく、全員何処かばつの悪そうな表情を浮かべる。


「皆さんがお気付きにならなかったのも無理はありません。ですからお気になさらずに」


その表情を察したのか、霊諍が激励の言葉をかける。だが今の一同にとってそれは毒にも薬にもなる言葉であった。



「しかし、他の遺跡から発見された兵器や技術に亡霊がとりついていた話は聞いた事がありませんよ」


霊諍の激励の意味があったのか、空弧が何時もの声でそう話す。すると霊諍は


「ええ、皆さんが解析に回して下さった兵器には亡霊がとりついていたケースはありませんでした。何故ここの遺産だけがそうなっているのか、或いは他にもこうした場所があるのか、その点についてはまだ分かりません。ですが……」


と語り、その語りを聞いた天之御は


「より多くの遺跡を調べればそれが掴めるかもしれない……か。分かった、僕達も可能な限り協力してあの亡霊達の情報収集に協力するよ」


と告げる。

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