第173話 森の遺跡へ

「これは……砂漠の先史遺産とは随分雰囲気が違いますね……」


唖然とした顔のまま空弧が口にする。だが唖然としているのは空弧だけではなく、その場にいた全員がそうであった。顔こそ他の面々に比べれば控えめであるものの、それは天之御も例外ではなかった。


「そうだね……僕も実際に見るのは初めてだ。恐らくは父もこれは見て居なかったと思う。父に提供された写真の光景はこれだったけど、まさか本当に遺産部分だったなんて」


と呟いた天之御の言葉がそれを物語っている。決して父や提供された写真、提供した霊諍を疑っていた訳ではない。だが他の先史遺産を知るが故に盲信も出来なかったのだ。だがこうして現実を見た以上、最早それは疑いようのない事実だった。


「あちこちに地下への入り口がありますね。あそこが入り口なのでしょうけど……」


岬の言う通り、この広場には所々に地下への入り口が見え隠れしていた。まるでターミナル駅の様に。


「これだけ広くてしかも他とは違う遺跡か。これはお宝もありそうな気がするな。そして、相当に警戒が必要な気も」


そう告げる八咫の言葉に反論はなく、全員が同時に頷いた。


「兎に角、一番近い場所に入ってみよう」


そう言って率先して地下に向かう天之御、他の面々もそれに続いて地下に入っていく。そして地下に入るが、その中は他の先史遺産の遺跡と変わらない機械的な雰囲気が漂っていた。


「中はこれまでの先史遺産の遺跡とあまり変わりませんね」


岬はそう呟く。だが天之御は


「否……違うよ。見て」


と言い、遺跡の中を見渡す様に促す。岬は一通り視界一帯を見渡すが特に違和感は感じず


「違うって何がですか?」


と問いかける。それを聞いた天之御は


「所々に枯れた花や畑らしき土もある。今までの先史遺産の遺跡は例え生命があった痕跡はあっても花や土は存在していなかった。全て機械的に処理していた様な痕跡があったからね」


と違うという点を告げる。

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