第174話 兵器だけじゃなく

「つまり、ここでは生命による農業や園芸が行われていたと言う事になりますね。まあ、それ自体はそれほど妙であるとは思えませんが……ここは戦場ではなく、居住地だったのかもしれませんね」


天之御の指摘した点を踏まえ、星峰が仮説を成り立たせる。その仮説を聞いた涙名は


「だけど今まで調査した先史遺産の遺跡にも生命が生活している痕跡はあった。勿論居住地も。にも関わらずここだけ何故更に生活感を増した痕跡があるんだろう?」


と星峰が立てた仮説そのものは否定しないものの、そこから更にもう一歩踏み出した形で疑問を提示する。涙名が出したその疑問に対し天之御は


「一番考えられるのは此処が先史遺産が現役だった頃、何か特別な場所だったというケースだね。そしてもし仮にそうだとしたら番猫族がしきたりに従ってこの場所に他の種族を立ち入らせなかった訳にも繋がっているのかも」


と返答する。その答えにも星峰の仮説同様、反論する者は居なかった。決して盲従している訳ではない。それ以上に納得する事が出来る答えが見つからないのだ。

市街地に降りた一同は近くにあった建物に入る。外見は殆ど朽ち果てておらず、ほぼ建築された時のままの様であった。そして中に入るとそこは生命こそいなかったが、一般家庭らしき広さの一軒家と言った内装が広がっていた。


「凄いですね。今の世界では各大陸の首都でもここまで機械で埋め尽くされてはいないですよ。妖術を並行して使ったとしてもここまではいかないのでは?」


そういった岬が近くにあったスイッチを押すとその部屋に存在していた機械が自動的に動き出し、料理を作ろうとしたり畑、花壇に水を灌いだり、その他色々な機械が動き始める。


「ちょ、一寸機械が動き出したわよ!!何してるのよ岬~」

「あ……御免、うっかり好奇心で……」

「も~勘弁してよ。今は生活の機械だからまだ良かったけどこれが警備システムだったりしたら大惨事になりかねないんだから」


呆れ乍ら言う空弧の叱責に対し、反省しているのかしていないのか良く分からない声で返答する岬、だが今の岬の行動でここにある機械が壊れていない事が証明された。それを見た八咫が


「だがここにある機械は壊れていないようだな。となるとこれまでの遺跡の兵器と同様、保存に近い形で残しておく技術が用いられていると考えるべきか」


と推測すると天之御は


「そういう事になるね。そしてそうだとするならそれは一般家庭の生活にも利用できる位極ありふれたものと言う事になる。それが軍事転用されない方が可笑しい」


と技術について推測する。その後一同はその建物を後にし、近くにあった大きな建物の中に入っていく。

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