第163話 届かない言葉
「黒き矢雨!!」
八咫はそういうと飛び立ち、羽を広げてその一枚一枚を宣言通り矢の様にして人族部隊に降り注がせる。その矢が突き刺さった人族の兵士はその場に崩れ落ち、兵器はいとも容易く破壊される。
「俺には迷彩車は狙えねえ……だが、じっとしてる訳にもいかねえ!!あいつらの邪魔はさせねえぞ!!」
八咫はそういうと更に羽を飛ばし、空弧と星峰に向かおうとする人族部隊の足を次々に止めていく。その隙を突き、星峰が標的となる細菌兵器を搭載した光学迷彩車の一つをその射程に捉える。そして
「狐斬術……影の半月!!」
と叫ぶと剣を前方に構えて突き刺し、姿を見せた光学迷彩車をそのまま切り上げてその動きを止める。そして更にそのまま上に着地し、乗り込み口を挙げて内部に突入する。当然の事ながらその中には人族部隊の兵士が乗っており、星峰が乗り込んできた事に狼狽えつつも
「撃て、迎え撃て!!」
と言って銃を乱射してくる。星峰はそれを難なく躱す。武器の癖も熟知している故だ。そのまま星峰は
「貴方達!!自分達が一体何を運んでいるのか、何をしようとしているのか本当に分かっているの」
と強い口調で兵士を問い詰めるが兵士は
「ああ、この兵器があれば町を占拠した魔神族を殲滅し、町を取り戻す事が出来る」
と強気な口調を返し、それに対し星峰が
「取り戻す!?本気で言っているの!!この兵器は魔神族が全滅した後もずっと残り続けるのよ!!そこに人族は住めないのよ!!」
と訴えかける様に告げるが兵士はそれにも動じず
「それがどうした?どのみち魔神族に制圧されて奴等の拠点として利用されているのであればその後はどうでもいい。一々そんな事は考えていられないからな!!」
と更なる強気で返してくる。
「全く、盲目的というのは恐ろしいわね!!狐妖術……緑の浄化!!」
星峰は呆れた様な、諦めた様な顔を一瞬見せると全身から緑の光を放ち、その光を細菌兵器に当てる。それを見た人族部隊の兵士が
「何をしている?それを破壊すれば……」
と余裕な笑みを浮かべるがその直後別の兵士が
「た、隊長!!兵器の有効物質が消滅しています。恐らくあの光で」
と動揺を隠せない声で言う。それを聞いた隊長と呼ばれた兵士も
「な、何!?」
と動揺した声を返す。その隙を突いて星峰は兵士に峰打ちを食らわせ、意識を失わせる。
「全く、ブントは本当に説得出来ないのね。そして……これは!?」
星峰は呆れたような声を挙げるが、その直後その顔が訝しい物に変わる。
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