第127話 秘密基地への招待
「えと…あの…ここは…」
いきなり見ず知らずの場所に飛ばされた涙名が戸惑いの声を上げると
「フフフ、ここは俺達の秘密の隠れ家だ。ここで戦力を溜めて何れは」
と八咫がおどろおどろしい声を上げるがそれを遮って岬が
「はいはい、大嘘つかない。私達の目的と真逆の主張になるじゃない」
と半ば強制的に締め、それに続いて
「全くだよ。只でさえ星峰も涙名も冗談が通じないタイプなんだから下手したら君がここで切り裂かれるよ。そうなったら僕もフォロー出来ないよ」
と天之御も続ける。二人に忠告された八咫は
「は、はい…」
と先程までの元気が完全に萎れ、借りてきた猫のような状態となる。特に天之御にまで言われたのがよっぽど堪えたのだろう。だが天之御の言葉は的を得ており、実際星峰は剣に手をかけようとしていた。
「まあ、ここが秘密の場所っていう部分だけはあながち的外れでもないんだけどね」
天之御がそう語ると星峰は
「秘密とはどういうことです?」
と当然の質問をする。それに対し天之御は
「ここは先史遺産の解析を行う極秘施設だよ。本来なら隠したくはないんだけど物が物なだけに…ね」
と少し物悲しい声で続ける。だがその真意は星峰も何となくではあるが察していた。自身の父がブントの資料を自分に隠していた、だがその鍵は託していたのと同じ心境ではないか、そう考えたのだ。ただ、自身の父との違いはその周囲に数名協力者らしき存在が居る事だった。そこに
「また新たな先史遺産が手に入ったのですか?」
と言う声と共に猫の様な姿の魔神族が話しかけてくる。
「うん、何時もの様に解析頼むよ、霊諍」
霊諍と呼んだその魔神族に解析を依頼する天之御、恐らくはずっと長い付き合いの顔見知りなのだろう。そのやり取りにもスムーズな流れを感じさせる。
「分かっています。我が一族を救ってくれた先代魔王様の悲願の為にも尽力します」
「ありがとう。けど…敬語、抜けないね。君達はあくまで協力者であり、軍属じゃないから敬語はいいのに」
「恩師の血縁者にため口を使う等恐れ多すぎます。では、早速作業に入ります」
そういうと霊諍は持ち帰った先史遺産を何処かへと運んでいく。今のやり取りを見ていた涙名が
「あの…今の、霊諍ですか、彼が言ってた事って…」
と遠慮がちに言うと天之御は
「う~んと…僕も生まれる前の事だから詳しくは知らないんだ。ただ、僕が生まれる前に父がブントの襲撃を受けた彼等の故郷を、そして彼等を救ったというのは事実だよ。映像記録も残ってる」
と返答する。その様子は言動の軽さこそ違えど星峰に対して自身の思いをぶつけていた時の天之御と同じであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます