第128話 断定出来ない事、出来る事
「ブントの襲撃を受けた?一体何故」
天之御が偽りの発言をしているのではないと感じた星峰はそう口にする。偽りでないのであれば尚の事その詳細を知っておく必要があると感じたのだ。
「映像資料で確認出来る事柄から推測すると…どうやら彼等の故郷は先史遺産と非常に深い繋がりがあり、その事を知ったブントがそれを我が物にする為に襲撃した。
最も最初は闇取引で取り込もうとしたみたいだけど、何らかの理由でそれが駄目になったって事みたい」
星峰に対する天之御の返答は何処か曖昧である。最もそれは致し方ない事ではあった。何しろ天之御自身もその詳細は残された資料で見ただけであり、話を聞いた訳でも、ましてやその場に居た訳でもないのだ。断定口調で言える筈がなかった。それを察したのか、星峰もそれ以上言及する事は無かった。
「それじゃ、戻ろうか。解析は一朝一夕に出来る物じゃないからどの道直ぐに結果は分からない。戻って次の行動を考えよう」
天之御がそう告げるとその場に居た他全員が頷き、転移妖術でブエルスへと帰還する。そして帰還した直後、謁見の間に狸の様な耳と尻尾を持つ魔神族が入ってくる。その魔神族は
「天之御様、少し厄介な申し出が出ています」
と駆け寄りながら話し、膝をつく。その様子は明らかに手馴れており、只の兵士とはとても思えなかった。
「豊雲、一体どうしたの?」
岬が呟いたその名は出撃前に話題に上がった名前だった。その名前を聞き
「この方が出撃前に話題に上った豊雲さん?」
と涙名が聞く。それを聞いた空弧が
「そうよ。で、一体何があったの?」
と説明と問いかけを同時に行う。すると豊雲は
「実は人族部隊に何かの動きが見られ、それを牽制する為にサウロタウンを攻め落としたいと沼島町から提案が出ています」
と告げる。
「おいおい、沼島町っていえば」
八咫がそう言いかけた後、何を言いたいのかはその場に居た全員が分かっていた。沼島町がブントの支配下であるという事は。
「ええ、ですがサウロタウンに何か動きがあるのも事実なのです。ですがこの場合…」
「十中八九ブントの策略とみるべきだろうね」
豊雲の発言を聞いた天之御はそう言い切る。
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