第126話 遺産回収 成功
その奥には大きな箱が一つ置いてあり、その箱は如何にも何かが入っていそうな物々しい雰囲気を醸し出していた。更に部屋の中も機械で溢れており、何か動き出してきても不思議ではなかった。そんな状況にも関わらず天之御は部屋の中に入るや否や箱をいきなり開ける。やはり何度も経験しているが故だろうか。
「いきなり開けて大丈夫なんですか?」
星峰も流石にこの行動には少し不安を隠せない。だが天之御は
「何か仕掛けがあったことは確かにあるけど、虎穴に入らざれば虎子を得ずだよ。ここまで来て罠だけで引き下がる訳には行かない」
と告げ、躊躇わない。その言葉に星峰も何となくではあるが納得した表情を浮かべる。危険を避けていては先史遺産は入手出来ない。その決意が天之御の表情から感じられた。
「で、中身は何なんです?」
天之御が開けた箱の中を覗く涙名、そこには先史遺産で作られたと思われる機械や武器、道具が大量に入っていた。
「これが…先史遺産?」
遅れて箱の中身を覗いた星峰がそう呟くと空弧は
「ええ、今までの先史遺産の入手時も大抵この形で封印されていたわ。一体何があったのか、それは分からないけど先史遺産はこうして分散し封印されているの。それを今の世界が利用しているの」
と解説する。それを聞いた星峰は何処か凄さと同時に畏怖も覚える。自分達も知らず知らずの内にこの技術に巻き込まれていたからだ。嘗て人族だった頃、様々な武器、機械を使っていた記憶が水底から浮き上がるように頭に浮かんでくる。それに対し何も知らずにいたと言う事も含め、少々の自己嫌悪感を抱く星峰。それを察したのか
「さあ、回収を終えたらさっさと戻るよ。解析も進めてもらわないといけないからね」
と天之御は素早くその場から立ち去ろうとする。このままいては星峰が余計な事を考えてしまう。そう思ったのだ。そして箱の中身を回収すると先程星峰が破壊した用心棒兵器の元に向かい、その兵器にも転移妖術を使う。
「それも持ち帰るんですか?」
涙名がふと疑問に思うと
「ああ、場所によってはこの機械がお宝だったケースもあるからな。それにこの機械をここに置いていてはブントに拾われる可能性もある。現にブントはこうした兵器を解析して大型兵器を作り出したのだから」
と八咫が返答し、それを聞いた星峰が
「大型兵器…もしかしてスリーリバーマウンテン付近の施設で魔神族が乗り込んできた兵器も先史遺産の技術で作り出された物なのかしら?」
と呟くと岬が
「その可能性は極めて高いですね。兵器が搬入された情報を掴んでいたから涙名君協力の元であの施設に向かってもらいましたがブントがそれを量産でもし始めたら厄介な事になります」
と続ける。それを聞いた星峰は自分達が天之御の手の内で動いていた事を改めて知るがそんな事は最早どうでもよくなっていた。それだけ魔神族に馴染んできていたのだ。
そんな会話をしつつ、天之御は転移妖術で移動する。だが移動した先はブエルスではなく、星峰と涙名にとっては全く見た事が無い場所であった。
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