第92話 その道の先は茨

「僕が調べた結果、人族側の大陸トップは全員がブントの構成員、それもかなり上位に位置する存在である事が分かっています。なのでそいつらを倒さない限り人族をブントの支配から完全に開放する事は不可能です」


星峰は既に承知している事実だが他の面々は知らない為改めて伝える涙名。その事実を聞いた空弧達は顎に右手を添え、何かを話し始める。


「となると、最終的な目的はそいつらの打倒って事になるけど、そう簡単に出来る話じゃないわね」

「ええ、ただでさえブエルスが陥落し、作戦が外部に漏れた。そんな状況で気が立たない方が無理があります。恐らくブントの構成員は焦っているでしょう」

「となるとその汚名を返上する為により慎重な侵攻を仕掛けてくるな。それが利口な策士なら」


空弧、岬、八咫がそれぞれ思い思いに今後の事を話し、涙名と星峰も思考を巡らせ始める。だがどの大陸もトップが居る首都へは決して簡単に近づける物ではなく、今後の展開は厳しい物になる事が予想された。だがその予想した直後に城内部の警報が鳴り始める。


「どうしたの?この警報は」


涙名が声を挙げると星峰達の前に魔力で作られたスクリーンが現れ、その中には魔神族の兵士が映っていた。


「天之御様、スリーリバーマウンテンより更に東側にある東楽大陸にて人族部隊の侵攻が確認されました。進路から考えると恐らく狙いは焼津町と思われます」


スクリーン内の兵士はそう告げる。


「焼津町か・・・確かあそこはスリーリバーマウンテンを挟んで東側にある。恐らくそこを足掛かりにしてこっちへの侵攻を図ってくるつもりね」


星峰がそう予測すると天之御は


「その進路予想図は出せる?」


と兵士に問いかけ、それを聞いた兵士は


「はい」


と短い返答だけを行って地図上に侵攻予想図を表示する。地図上で赤く示される侵攻予想図、それは確かに焼津町を目指していた。


「よし、沼島町の部隊を出撃させ、進路上に向かわせて迎撃させる。至急そう伝達して」


唐突に出た天之御の発言、それは一見すると理解不可能なものであった。態々他の町の防衛部隊を動かす等回りくどすぎるからだ。だがその意図はその場に居た全員がおぼろげながら察していた。その後天之御は


「部隊の出撃が確認出来て、いや、交戦状態に入ったら焼津町に連絡、防衛部隊を展開するように呼び掛けて」

「了解」


続けて更なる指示を出し、兵士がそれを了承すると同時にモニターは消滅する。それを確認すると


「場合によっては君達にも出撃してもらうよ」


と星峰達に告げる。その場合とはどの場合を意味しているのか星峰達は理解していた。そして彼らが出撃することなく二時間が過ぎる。

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