第93話 繋がる世界、絶たれる関係

「やはりと言いますか、必要以上に時間がかかり過ぎていますね」


魔力を用いて上空から戦場を監視していた天之御達、その口火を切ったのは涙名だった。彼がやはりと言った理由はこの戦いでぶつかっている双方がブント側の構成員であるという事を知っていたからだ。


「でも決着はついたみたいですよ。人族側が後退していきます」

「いえ、決着がついたというよりもこれは寧ろ、侵攻への時間がかかり過ぎて防衛戦力が整ったという連絡が言ったとみるべきね」


岬が人族部隊の後退を確認すると星峯は冷静にその状況が示すであろう答えを伝える。


「事前に監視を伝えておいたのは正解だったか。そうでなきゃ間違いなくサポタージュしていただろうからな」


八咫がこういった理由はかかった時間に対して双方の戦力の消耗が少なすぎるからだ。それに対する反論はない。全員が同じ事を考えていたからだ。


「しかもその隙をついて侵攻するという行動にも出ていない。恐らくこれは東側の独断による作戦行動なのでしょうね。連携を取らなかったのか、取れなかったのは不明ですが」

「まあ、ブエルスを経由せずに大陸を行き来するには空か海を使うしかないけど、その周辺は全て僕達が抑えてあるからね。物資にも審査が入ってるから怪しい物があれば直ぐに連絡が来るようにしてあるし」


天之御の言う通り、異なる大陸を繋ぐ経路は全て魔神族の、正確に言えば天之御側の魔神族の制圧下にあった。


「ブエルスを攻め落としたのは奴等の連絡経路を断つという目的もあったのですか?」


星峯はふと浮かんだ疑問を口にする。すると天之御は


「そう、ブエルスはいわば交差点でもあるからね。そこを制圧すればブントの連携を大きく制限することが出来る。ま、これを教えてくれたのは僕の父と、それから・・・」


そう言いかけて涙名の顔を見る天之御、だがそれだけでも星峯は天之御が何を言いたいのか理解するには十二分に事足りた。


「先代の魔王様は恐らく、開戦初期から連絡経路を抑える事の重要性を理解していたのでしょう。ブント側だったエリアを就任後直ぐに開放しましたから」

「そして僕にも度々聞かせてくれたよ、その重要性を。当時は只流している様な感じだったけど、今は・・・」


先程までのあっけらかんとした口調とは打って変わって重く強さを込めた言葉になる天之御。それを聞いた星峯は


「必ず・・・お父様の願いを成就しましょう」


と告げる。それは星峯が天之御に送る初めての激励であった。

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