第91話 反逆の引き金

「ルイナの母上の・・・為?」


母上という言葉に星峰は何かを感じ取る。それもその筈、星峰はルイナの母親は遠征中に魔神族に襲撃され、命を落としたと伝えられていたからだ。だが今の話を聞き、それに法皇が関わっているという確信を抱く。その確信は直後の


「そう、あの男は魔神族との和平の可能性を見出しかけていた母上を疎ましく思い、外部への遠征を勧めてそこをブントに襲撃させた。母上が天之御との連絡手段を持っている事も知らずにね。

そして現地で迎撃にあたった人族部隊の一人がその連絡手段を僕の元に届けてくれたよ。それが、今まで続く僕と天之御達の繋がり」


というルイナの発言で裏打ちされる。


「分かった。でも今日はもう遅いし、続きは又今度にしましょう。そろそろ私も休まないと」

「そうだね、お休みなさい、星峰」


星峰はそう言ってルイナを外に出す。だが星峰が話を切った理由は単に時間が遅いというだけではなかった。ルイナの声の抑揚から冷静さを失い、気持ちが悪い意味で高揚している事を察したからでもあった。その心境を思い、少し暗い顔を浮かべつつも星峰は床に就く。その眠りは深く、ほぼ同時に意識は途絶える。

翌朝、窓から差し込む光に照らされて目を開ける星峰、衣服を身に纏って謁見の間に向かう。


「星峰もほぼ同じか」


その言葉と共に八咫、岬、空弧も謁見の間に入ってくる。そしてその中では既にルイナと天之御が居た。


「君達も来てくれたんだね」


天之御が笑顔で迎え入れるとルイナは


「そういえば、昨日はまだ名前を名乗っていませんでしたね。僕は涙名、涙名です」


と自らの名を名乗る。その名前を聞いた星峰以外の面々は一瞬困惑した表情を浮かべる。だが事態を察したのか、その表情は直ぐに元通りになる。この様子を見、星峰が動揺しなかった事を見た天之御は


「動揺は無し・・・か。どうやら昨日の間に聞いたみたいだね」


と昨日二人の間で何かあった事を悟る。

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