第61話 眠り覚ます鍵

翌日スターは窓からの日の光で目が覚めた。疲労していたのだろうか、何時眠りについたのかも分からない程深い眠りについていた。日の光が顔に当たらなければ一日中眠り続けていたかもしれない、ふとそう思ってしまった。そこで扉が開き


「目が覚めたみたいだね」


と言いながら天之御が入ってくる。


「それで、どこに向かうんです?」

「せっかちだね、その前に食事位しなよ」


天之御はそういうと部屋の前に止めてあったワゴンを中に入れる。その上には人族と変わらない食事が乗せられていた。当然食欲等沸いていなかったが、何故か目の前に置かれた瞬間に何時も通りの感覚でスターは食事を始めてしまう。


「何故勝手に手が出る・・・食欲等今の俺には・・・」


そう言いつつも止まらないスター。それを見た天之御は


「ああ・・・」


何かを察したようだが、あえてそれを口には出さずにいた。これから共に出かける相手を不機嫌にしたくはなかったからだ。そのままスターの食事が終わるのを待つと


「じゃ、移動しようか」


そう口にして転移魔法を使い、自身とスターを何処かへと移動させる。そして瞬間移動が終わるとそこは中規模な町が見渡せる小高い丘であった。移動で連れてこられた場所、だがスターはその場所に大いに覚えがあった。


「こ、ここはまさか・・・」

「そう、君の故郷ウェスフォースタウンだよ。僕達は四条通町って呼んでるけどね」


思わぬ形での帰郷、それはスターにとって昨日までの一連の出来事と同等或いはそれ以上の衝撃であった。だがその衝撃は更に続く。この町も又、昨日の村と同じく人族と魔神族が共生していたからだ。


「そんな馬鹿な・・・俺が居た頃は共生なんて・・・」


信じられない光景にただ呆然と立ち尽くすスター、そんなスターをみた天之御は


「その謎を解く鍵はここにあるよ」


そう言って後ろの豪邸を指差す。その豪邸を見てスターは


「!!何故、ここにその鍵が・・・」


驚愕に困惑が混じった何とも言い難い顔を浮かべる。何故ならそこは他ならぬスターの実家だったからだ。


「さあ、鍵を開けに行こう」


天之御に促されるままに足を踏み入れるスター、最早立て続けの混乱で思考が機能しなくなっていた。勝手知ったる家、だがその中は不自然な程整頓され、荒れてはいなかった。そして天之御に促され、父の書斎へと足を踏み入れる。そこで不意に


「さて、君は今からこれを見た事がある?」

「え?」


意味の分からない言葉をかけられ困惑する。父の部屋とはいえ、足を踏み入れたことは何度もある。見た事ない物など・・・そう思っていた矢先、天之御が本棚を動かす。その裏側には魔法封印が施された扉と何かを差し込む穴らしき物があった。


「こ、これは・・・」

「どう、見た事ある?」


予想の斜め上を行く天之御の問いかけにスターはただ首を横に振る事しか出来なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る