第60話 迫る分岐点
「それは、私が使った入れ替え術の効能です」
そう語るのは今の状況を作り出した張本人と言える存在、空弧だった。スターは何も反論せず、空弧に話を続けさせる。
「あの入れ替わり術は単にお互いの体を入れ替えるだけではなく身体能力、魔力等がその際より能力の高い方に合わせられるのです。つまり・・・」
「体だけでなく、能力も共に奪うことが出来る。しかしそれは同時にこちらの能力を奪われる事でもある。そういう事・・・ですね」
スターの概説に対し首を縦に振る空弧、それはこれ以上の説明が必要ない事を意味していた。
「相手の体だけでなく能力まで奪えるとは・・・便利極まりないですね。一度しか使えず、戻れないのも納得です。能力が維持されるのであればそもそも戻る必要もないでしょうし」
若干皮肉った言い方で返すスター、だがその皮肉に反論、反発する者はいなかった。したくても出来なかった。どう返せばいいのかが分からない。
「その入れ替わりが結果として今回の行動阻止に役立ったという訳ですか」
皮肉った言い方はさらに続く。だがスターの内心も又、これを言い続けなければ壊れてしまいそうな部分があった。自分が人族の軍隊と戦ったという事実が重くのしかかっている。
「その話は分かりました。では次、ブエルス制圧後、貴方達は法皇を処刑したのですか?」
その発言に一瞬顔色が変わる天之御。そしてその口を少しずつ開き
「・・・命じたのは僕ではないけど、処刑したのは事実だよ・・・」
と威勢の無い、弱弱しい声でスターの問いかけに答える。その答え方だけでスターは天之御は嘘は言っていないと直感した。ここまでの会話からそう推測するのに手間はかからなかった。
「そう・・・ならこれ以上聞く事は・・・」
「無いのなら・・・スター君、君に頼みたいことがあるんだ」
話を終えようとしたスターに天之御は突如として頼み事をする。
「・・・どうせ今のままでは逃げられません。何ですか?」
適当にあしらおうとしている様にも、自暴自棄になっているともとれる返答をするスター、その雰囲気を感じつつも天之御は
「明日・・・僕と一緒にとある場所に行って欲しい。それだけだよ。今日はもう休んで」
と内容だけを告げ、配下と共にその場を離れる。一人残されたスターは涙を流すでも、何かを考えるでもなくただそこに横たわっていた。色々起こりすぎて何をどうすればいいのか、もうわからなくなっていた。
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