第6話 お母さん?

「うーん、看護師ね」

 保Tやすてぃーは私の書いた進路希望書と私の顔を何度か行き来していた。

「でもな、杉山。看護師は命と向き合う職業なんだぞ? 厳しい状況に出くわす事も沢山ある。病気は待ってくれないんだぞ? 少しのミスが命取りになることもある。本当に大丈夫か?」

 私には迷いはなかった。

「はい、大丈夫です」

 眉にしわを寄せて、少しうなだれると保Tは続けた。

「もしかして、看護師になって、医者と結婚して、後は人生あがり、なんて考えてないだろうな? 医者ってのはもっと大変でなかなか家にも帰ってこなかったり、短命だったりするっていうし、そもそも医者と結婚出来るかどうかってのは……」


 ふと外を見てみた。やっぱり新年はどこか気持ちがいい。今年は何か違う気がする。きっと素敵な未来が私を待っている。だって母さんがくれたこの人生だもの。

 ねえお母さん? 私、看護師になってみたい。看護師になってお母さんみたいに病気で苦しんでる人を助けてあげたい。どう? いいよね?

 ふと浮かんできた母さんの笑顔は、いつものあの優しい笑顔だった。


 アイツ…いやアイツじゃなかった、神様だった。神様には一応感謝している、私に大事な事を気づかせてくれたのはあの神様のお陰だから。これからはちゃんと毎年お参りにいくからね、出来たらミキ達も連れて沢山の人がお参りにくるようにしてあげないとね。ありがと、神様!


 外は冬晴れ。時折吹きすさぶ風はまだ冷たいけれど、どこか心地よく、辺りを吹き渡っていた。きっと河川敷では今日も野球の練習をする少年達が寒い中、大きな声をあげているに違いない。


(了)



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