Chapter2【an Alteration】
Stage3_遠見《to me》
「どこに行ったんでしょう……」
「こっちだ」
純は辺りを見回すが、
「それもなにかの能力ですか?」
純が追いながら問いかける。
「SNSの能力の応用だ」
「というと連絡が取れるとかですか?」
「こっちはウィズがいるから通信はできるが、平サンにはそれを送るためのグラトンがいない。だから向こうから連絡は取れない」
(あの人ガラケーだし、あんな状態じゃ電話とかしてこないだろ……)
「それに写真投稿するタイプだから、メッセージはメイン機能じゃないし」
眼鏡を直しながら
「えっと、それじゃあどうやって居場所を?」
「応用って言っただろ。普段の偵察では二手に分かれるときのためにウィズの眼を平サンに移しているんだ。俺たちはこの能力をファインダーと呼んでいる」
眼の機能を移すことで一時的にウィズは瞳の無いガラスのような眼をしているのだが、
「
「戦闘にはゲームの対戦が必要だけど、そういうスコアのいらないモノだからな」
「……平さんのこと、助けるんですね」
「意外だと言いたいのか?」
「正直。冷たい人だと思っていましたから」
「……自分のためだ」
二人は夜闇と不安を振り払うように腕をふって走った。
(それにしても酔いそうだ……)
現在、
「ウィズ、こっちは任せた」
その瞬間、
人を避け、ほの暗い道を疾走する。
どこか無機質な瞳、わずかにぎこちない動き。いま、
――ウィズによる
『いまはわたしがお父様の身体を操らせていただいています』
ウィズの声で口を開かずに音を発したのを聞いて、純は理解した。眼鏡の奥の目が、さっきまでの
「憑依もできるんだ……」
『それにしても、お父様の身体……。お父様の身体ですッ! うふふ、久々にお父様と一つになれました。ふふ』
壊れたように笑うウィズから歓喜の言葉が流れる。純は片眉をつり上げた。
「……ずいぶん
『お父様の命令で動いているだけですので。タイラなど知ったことじゃありませんね』
『大体、自業自得でしょう、勝てもしないのに飛び出すなんて。その
揺らぐことのない無機質な声を聞いて、純は額の汗を拭って押し黙った。
『さぁて、うふふ、お父様の
ウィズが喘いだかと思うと
「――いた」
「どこですか!?」
純は上がってきた息を抑えて噛みつくように聞く。
返ってきた答えは途切れ途切れの息の合間で。
「すッぐ、そこ、なんだよッ!! グラトンが、あァア!!」
純の顔からすっと温度が消える。
二人は姿勢を落として通りを曲がった。
街灯り、寂れた店、冷えた空気。
グラトンの鋭い爪が平の身体を貫いた。
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